雑貨屋ウィークリー1362号

雑貨屋のひとり言「誰かが見てますよ」

ある繁盛しているお弁当屋さんが、店内の状況を撮影しYouTubeで生配信して弁当の在庫状況をお客に確認してもらうようにしていたら、それが話題になって売り上げが1.5倍になったそうです。とても興味深い話ですが、それ以上に注目されるのは弁当の万引きが10分の1になったということです。別に万引き用に設置したカメラではないのですが、映像が生配信されていると、万引き犯からすると監視カメラがあるのと同じ効果になっているようです。すると犯人はYouTubeのことを知っていることになりますね。(あと1割は知らないだけ?)日本のどこかで誰かに見られてるという心理が働くと悪いことはしにくくなります。誰も見ていないと思っていてもちゃんと神様が見ているんですよと言われたことがありますがそれと似ているところがあります。日ごろ、私たちが困っている場面で応用が利くのではないかと考えているところです。《R.O.》

川柳(東京・成近)

( 川 柳 )

無神論唱え茶柱気にしてる

賽銭を弾みましたと絵馬の誤字

お守りがしがみついてる暴走車

袖触れただけで女神と擦れ違い

居心地を貧乏神に褒められる

( ニュースひとりよがり)

「どうにもとまらない」

♪あらら あらら —下落の円

「こども家庭庁」

財源は国債か —こども

「二刀流プラス」

投げた 打った 止めた —大谷翔平

河合成近

龍翁余話(734)「昨年、公園で出会った老人と再会」

1年前(2021年)の6月に「文庫の森公園で出会った老人」のことを『龍翁余話』(629)に書いた。その老人に先日、同じ場所で、また出会った。“こんなことって、あるんだ”

――“奇遇”に胸を弾ませながら(昨年の)『龍翁余話』(629)を読み返す――

【・・・翁の散歩コースは(これまで本欄で数回紹介したように)戸越銀座商店街を抜けて「戸越八幡神社」に参拝、直ぐ近くの「文庫の森」(旧三井文庫=国文学研究資料館跡地)公園内で少し休憩したあと、更に直ぐ先の「戸越公園」へ行くのがいつもの散歩コース。

緊急事態宣言解除の数日後の朝(10時ごろ)家を出て、同じように「戸越八幡神社」に参拝後、「文庫の森」の3人掛けベンチの端に座って小休止(ベンチの真ん中は“使用禁止”の黄色テープが張られている)。冷え茶で喉を潤し、幼児たちの元気にはしゃぎ回る姿を微笑ましく眺めていると、翁と同年配くらいの、夏ジャンパー姿で杖をついた1人の老人がゆっくり翁に近づき語り掛けて来た「やあKさん、おはようございます。今日はいい天気ですね」翁の名はKではない。2人ともマスクを着けているのでお互いに顔がよく分からない。だから“この老人、オレのこと、人違いをしているな”と思ったが、あまりに親しげな様子だったので、翁もつい「ああ、おはようございます。爽やかな初夏ですね」そう言って翁、自分と同じベンチの端を手で指して老人に「お座りになりますか」と勧めた。その老人、ベンチに腰を下ろしてから「いつぞやは、せっかく拙宅においでいただいたのに、何のお構いも出来ず大変失礼しました」“ちょっと待て、オレはKでもないし、この老人とも初対面だ。この人、いよいよ人違いしている”。翁、返事に困って「はア、どうも」と言ったきりで、次の言葉が出ない・・・それから10分ほど、その老人の独り言が続いた――奥さんのこと、娘夫婦や孫たちのこと、沖縄や九州へ旅をした時の話など――(勿論、翁とは何の関係もない話)まるで翁の存在を無視しているかのように、しゃべりまくった。翁、仕方なく時折(気のない)相槌を打った。しばらくして、その老人が言った「ああそうだ、私はまだ朝メシを食っていないので早く帰らなければ・・・済みませんが女房に電話してくれませんか?」。「ああ、いいですよ」翁、バッグからスマホを取り出し「よかったら私の携帯をお使い下さい」。すると突然、老人の目が天を向いたり、首をひねったり、杖をベンチに立て掛けジャンパーに両手を突っ込んで何かを探す仕草をしたり・・・“そうか、電話番号のメモでも探しているのだろう”と思って見守った。すると老人は弱弱しく言った「番号を忘れた。Kさん、済みませんが私を家まで連れて行ってくれませんか?」「え?」翁は驚いた。そしてやっと気付いた。“この老人、翁のこと、人違いではなく(もしかして)認知症ではないだろうか?”・・・でも、念のため、翁は訊ねた「あなたのお名前と住所を教えて下さい」すると老人、哀しそうな目で翁を見つめるだけで無回答。翁、ここで彼が認知症であることを確信。ならば、老人の心象を傷つけないように、穏やかに、そして、ゆっくりベンチから立ち上がり、その老人に「直ぐそこに、あなたのお宅を知っている人がいますから、その人の所までご一緒しましょう」と言って老人に杖を持たせ、公園脇にある交番へ連れて行った。老人は大人しく従った。2人のお巡りさんがいた。翁「この方、ちょっと気分が悪くなってお宅に帰りたがっています。お願い出来ますか?」「ああ、いいですよ」(あとはお巡りさんが認知症であることに気付いてくれるだろう)翁は(規定通り)自分の名と電話番号を所定用紙に書いて交番を去った。「戸越公園」行きは止めた。何とも気が重い、哀しい気持ちになった(いずれは、我が身か)・・・夕方、同交番から「無事に送り届けました。お住まいは戸越公園の近くでした」との連絡あり、ホッとした。

翁、近年“うっかり”による失敗や“物忘れ”が多い。『龍翁余話』を書いている時、固有名詞がなかなか思い出せなくて執筆を一時中断することがある。最近、数字(年代)の間違いもあり『龍翁余話』の読者から指摘されたりした。会話でも「あれ、これ、あの人、あそこ(場所)」の連続でイラつくこともある。厚労省の資料によると「加齢による物忘れ」だと、例えば食事の場合「昨夜食べたメニューは忘れても、食べたことは覚えている」が、「認知症」は「食べたこと自体を忘れる」(記憶障害)。また、探し物の場合、「加齢による」は「忘れたことに気付いて自分で探す努力をする」が「認知症」は「誰かが盗んだ」などと人のせいにする(意識障害)。更に「認知症」は「時間・場所・季節の感覚が無くなるので、時間帯や場違い、季節外れの服を着たり、徘徊することもある」(見当識障害)。もう1つ「認知症」の大きな特徴は「対面者が誰だか分からなくなる」(理解判断力障害)などの症状が目立つようになる(など)。「公園で出会った老人」は、まさにこれらの症状に該当する。厚労省では「2025年には5人に1人が認知症にかかる」と言っている。翁の“記憶力低下”や“うっかり”は、今のところ“加齢”が原因だと思うが“認知症予備軍”であることには違いはない。翁の散歩は、これからも続く。先日『公園で出会った老人』に、また会えるだろうか?お元気でいてくれればいいが・・・】と(629号は)そこで結んだ。

そして今年、梅雨の晴れ間の、つい先日のこと、例によって「戸越八幡神社」を参拝し、近くの「文庫の森公園」へ。陽当たりのいいベンチに腰を下ろして冷え茶を飲んでいると、ベンチから少し離れた通路を老婦人が押す車椅子に乗っている無表情の老人を見かけた。「あ、あの老人、もしかして昨年出会った認知症の?」間違いない、老人の顔ははっきり記憶にある。昨年と同じ夏ジャンバー姿に杖を抱えている。では、あの車椅子を押す老婦人は、(去年、会話に出た)奥さんだろう。「こんなことって、あるんだ!」――翁、急に懐かしさを覚え駆け寄りたい衝動に駆られ腰を上げかけた。が、ちょっと待て、奥さんは当然、オレのことは知らないし、その老人だってオレのことなんか覚えているはずもない」

そう思ってまた腰を降ろした。しかし、懐かしかった、嬉しかった。昨年と違って今年は車椅子ではあったが「よくぞ、お元気でいてくれた」そう思って翁、何となく胸を熱くした。やがて車椅子は、翁が座っているベンチに背を向け遠ざかる。翁は心の中で呼びかけた。「お互いに元気で、来年も会おうね」・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。

茶子のスパイス研究「時間を食べる」

“時間を食べる” この言葉は“タイマグラ婆ちゃん”というドキュメンタリー映画を作られた澄川嘉彦監督さんが、この映画を紹介する時に考案した言葉だ。たまたま三軒茶屋のキャロットタワーに立ち寄った時に“時間を食べる”というイベントの案内を見てその言葉に魅かれて何だろう?と入ってみた。入口付近に設営されたこじんまりした部屋に入るとすぐに笑顔のご夫婦の写真が出迎えてくれた。写真には、四季の中で味噌作りに励むご夫婦の様子や岩手の早池峰山の風景やご夫婦の何気なく語られた言葉などが大きなパネルに展示されてあった。真ん中には顕微鏡で覗ける麹菌が展示されていた。午前中の早い時間だったせいか、イベントホールは誰もいない静かな空間だったのに、何か気配さえ感じるような存在感があった。そして、たくさんの思いが私に伝わってきて条件反射のように涙が止まらなくなってしまった。自分でも、その思いが何なのか、その理由を探りたくて導かれるように“タイマグラ婆ちゃん“の映画を見に行った。とても感動した。私達が失いかけている大切なものが、そこにあった。そしてその映画を作られた監督さんに会いに岩手の山奥に出かけたのだ。前置きが長くなってしまったけれど先週、初めて母と梅酒を作りながら時間が食べ物を美味しくしてくれるのだな~と監督さんの映画を思い出していた。

そして店頭で梅の実の隣にらっきょうが並んでいたのが気になり始めた。らっきょうも今の時期に漬けるのだろうけれどらっきょうも漬けた事がない。どんなふうに作るのだろうと調べていたら、おたふくさんのらっきょう作りの教室を見つけた。そして早速申し込んだ。実は、おたふくさんもLAではクライアントさんだったので、とても懐かしい気持ちになった。パロスバーデスやサンペドロのハイキンググループのパーティーでもおたふくさんのソースが活躍してくれたのだ。東京のおたふくソース東京本部(おこのみスタジオ)は東西線の木場駅近く新緑の緑が綺麗な木場公園の前にあった。初めてこの駅に降りておこのみスタジオビルに向かった。1階には、おたふくソースさんの商品がカラフルに展示され販売もされていた。壁際には無料で頂けるレシピと“ほっとおたふく”の雑誌が置いてあった。レシピを見ていたら、あれもこれも美味しそうで作ってみたくなる。いちいち選ぶのが面倒で、どうせならと欲張って全部しっかり頂いてきた。“ほっとおたふく”の雑誌もパラパラ手にとって見ていたら、とても充実している内容の記事に加え、そこに掲載されているレシピも美味しそうで、これもだ!とそこにある春、秋、夏、冬の号を全部頂いてきた。表紙のイラストも季節感がありセンスがあっていい。片っ端からその雑誌を集めているのを見ていたのだろうか私の隣に座られた方から“その雑誌も申し込めば家に毎回、無料で送ってくれるのですよ”と教えてくださった。何て懐が大きいのだろう、今どきの会社では珍しい。でも後からおたふくソースさんが創業から今年2022年11月に100周年を迎える事を知って大いに納得した。100年、存続し続けるという事の意味。並大抵ではない。そこには創業者の心意気が今も生きているのだ。生産者と消費者がちゃんと繋がっているのだ。へ~とか、ホ~とか感心しながら後は家でじっくり読もうと雑誌をバックにしまい込んだ。クラスでは最初に、らっきょうの漬け方の説明を聞いた。島根県から届いたばかりの土の付いた新鮮な、らっきょうが1人1人に配られた。お持ち帰りの、らっきょうは瓶でなくジップロックの付いた丈夫そうなパッケージだったので助かった。らっきょうを一つ一つほぐした後は水で軽く洗う。そうすると外側の皮がとれやすくなるのだそうだ。それから黙々とらっきょうの皮剥きをした後、沸騰した熱いお湯をかけ水分をペイパータオルでとる。そのらっきょうをジップロックのパッケージに入れ、上から、おたふくさんのラッキョウ酢を注ぐ。好みで唐辛子を1~2本入れておしまい。わりと手軽に出来るのだ。

後は時間がらっきょうを美味しくしてくれる。らっきょう酢はロスアンジェルスの日系マーケットでも購入した事がある。その時はらっきょう酢を利用してサラダドレッシングや炒め物に使おうと購入したのだ。ツーンとした、あの刺さるような米国の酢と違っておたふくさんのらっきょう酢は、まあるく優しい味わいのあるお酢だったので私のクライアントさんにも評判が良かった。クラスは11時から始めてお昼を過ぎ1時近くなっていた。さ~これで出来上がりと思ったら何とスタッフの方がいつの間にか私達のランチまで用意してくださっていた。至れり尽くせりのサービスに感激した。トマトのサラダもチキンのタルタルソース味も上手にらっきょう酢が使われていて、そのレシピもあった。おまけに、らっきょう酢のレシピ本、500mlのらっきょう酢(万能酢)サンプルとしてデーツの実までお土産に頂いた。そして、そのずっしり重くなったバックを抱え家に向かった。

これからジメジメした梅雨がしばらく続く時に、食欲をそそり殺菌効果もある、おたふくさんのお酢を使って大いに私のスパイスキッチンでも活躍してもらおう。

スパイス研究家  茶子

ジャズライフ Cal Harris Jr. “Shelter Island”

キーボード奏者のCal harris Jr.のアルバム”Shelter Island”を紹介します。このジャズはスムースジャズのジャンルです。曲ごとのクレジット(演奏者等のデータ)がないのですが楽器の音のバランスが良いのでとても聴きやすく何度聴いても飽きません。軽快できれいな音が特徴でしょうか?《R.O.》

Cal Harris Jr. “Shelter Island(Deluxe Edition)”

1-Sheter Island (Remix) [feat. Euge Groove] 3:55       
2-Wave Rider (feat. Lebron) 6:08        
3-Shade Tree 4:38        
4-Smooth (feat. Elan Trotman) 4:42        
5-By the Bay 4:26        
6-Wave Rider 4:30        
7-Last Love Letter 1:39        
8-Coco’s Tears 3:50        
9-Reflection 3:59        
10-The Waiting (feat. Joel Del Rosario)        3:07        
11-Shelter Island 3:56        
12-Sunset Chasers (feat. Marion Meadows) 4:04       
13-Wave Rider (Radio Edit) [feat. Lebron] 3:42        

編集後記「探し物は何ですか?」

目の前にあるはずのものが見つからないことがあります。昨日まで、いやさっきまであったのにです。するといつも置くはずのところを一所懸命に探すことになります。この「いつも置くはずのところ」が曲者です。自分では絶対いつもと同じところに置いていると信じているのですが、何かのはずみでいつものところに置けなかったということが起こります。何か別のことをやっていてほぼ無意識にポンと置いてしまったりするとそれは記憶の中に残らないのでそのあたりは探す対象外となりスルーしてしまうのでいつまでたっても見つかりません。

これとよく似たことがあります。考え事をしているとき、どこにでもありそうなアイデアを「そんなの誰でも思いつくだろう」と思ってスルーしてしまうことがあります。何事も先入観や思い込みで考えたりすると、その方向に引っ張られて考えの範囲が狭くなってしまいます。思い込みがチャンスの芽を摘むことを私たちは知らないうちにやってしまっているかも知れません。気を付けたいと思います。《R.O.》

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