ヒーリングガーデン その2
先週、久しぶりにあの雑貨屋Weeklyにも登場したヒーリングガーデンがある彼女の家に立ち寄った。先日、シエラクラブのグループイベントで頼んでおいたハリウッドボールのコンサートチケットを彼女が預かっていてくれたのだ。それをとりに行く予定だった。
“今週末は家で庭仕事やら雑用があるので夕方頃チケットを取りに来て" と言われて取りに行ったら、またまた夕食のおもてなしを受けた。
春頃、彼女のヒーリングガーデンを訪れた時はあらゆるお野菜が元気に豊富に溢れていた。今度はどんなお野菜が出てくるのだろうと思ったら一番奥の野菜畑のセクションは全滅したと開口一番に彼女から聞かされた。全部何者か(動物)に食べられてしまったのだそうだ。2−3日の間に見事に食べつくされ見せられた畑は無残な姿になっていた。本当に根こそぎ何も無い状態だった。
彼女の家はパロスバーデスと隣接する少し小高い山の方にある。どんどん山の方も開発が進むとそこにあった森や木が無くなって食べるものを探しに動物たちも積極的に餌を探しに遠出する。動物も餓死するわけもいかないし必死なのだろう。
以前オレンジカウンティーの方でバイカーの人たちがマウンテンライオンに襲われる事故が相次いだ。
山や木を切り崩してどんどん新しい住宅が建ち動物たちは居場所を追われ食べ物を探しに人が
住む居住区まで降りてくるようになった。と言っても元々そこに彼らがそこに生息していたわけで
そこに我々人間が後から住み始めたわけなのだから人間が新参者で礼儀をわきまえないといけないのだろう。自然には自然のルールがあるのだからそれがどんな形でしっぺ返しが来るかわからない。
″人のほうが後だべ ″この言葉は私が痛く感動した″タイマグラばあちゃん ″というドキュメンタリー映画の中に出てくるおばあちゃんの言葉だ。でも、どうやって今後うまく人間と自然や動物たちが共存共栄していけるのだろう。そういう英知を人間はこれから見出していけるのだろうか…
彼女の畑を見ながら畑から海や空や宇宙までいろんな思いが広がっていった。
彼女の裏庭にある果物の木もそうだ。今頃はピーチのシーズンだが、ちょうど熟して甘い香りがする食べ頃になったと思ったらそのタイミングを狙って鳥がやってくる。こちら人間が食うか鳥に食われるかどちらが先か毎回、競争なのだそうだ。
木に小さなミラーをぶら下げて鳥の侵入を防いだり網をかけたりあれやこれや工夫しなければならない。幸い今回ハーブガーデンや花の被害は無かったようだが手塩にかけた大事なお野菜がやられたのは彼女にとってかなりショックだったようだ。
“今までこの庭にどれだけ時間とお金をつぎ込んできたことか、それがあっという間に、これよ!
もう頭にきちゃうわよ。” 彼女はプリプリ怒りながらも今夜の料理に使うスパイスを数種類、手早く摘んでキッチンに戻った。
相変わらず手が早い。猛烈に喋りながらけして手のスピードが落ちる事はない。今回は私が知らないバジルを摘んできて見せてくれた。いつものバジルと形も香りも少しずつ違う。其々に爽やかで柑橘系の匂いのするバジルだった。その3種類のバジルとトマトとモッツアーレチーズとグリーンオニオンのサラダがあっという間に出来上がった。その彩もなかなかバランス良くまるで高級レストランのサラダのような仕上がりになった。
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3種類のバジル |
バジルとトマトとチーズのサラダ |
セージ |
それから摘んできたセージを手の平に載せて私に嗅がせると ″いい匂いでしょう? ″と言ってセージを木の真ん中がへこんでいる珍しいまな板で切り刻んだ。そしてそのセージとガーリックを丹念に炒めてから蒸かしたての小玉ジャガイモをオリーブオイルでじっくり炒め始めた。それと同時にオーブンに入れたローズマリーをまぶしたチキンの焼き具合を何度もチェックしていた。
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ウスラのキッチン1 |
チキンとローズマリー |
ジャガイモとセージ |
キッチンでテキパキ動いている彼女の傍でそれを見ながら前日に行ったフジコヘミングさんのコンサートでフジコさんが最後の頃に弾いた曲ラ カンパネラをPCから流した。フジコさんのピアノが始まると彼女の手が止まった。″一体誰なの?素晴らしいわ ″彼女は驚いてPCの傍に来てじっと彼女の映像を見つめた。
その後、他のフジコさんの音楽を流すと彼女は料理をしながら矢継ぎ早にいろいろ質問してきた。私はフジコさんの事はあまり詳しい事は知らない。もうだいぶ前にNHKで彼女のドラマティックなドキュメンタリーを見た。
掃除をしながらチラチラTVを見ていたらすっかりそのドキュメンタリーに引き込まれて掃除の手を休め終わるまで見入ってしまった。いつか彼女のコンサートに行ってみたいな〜と思っていたらその後
間もなくUCLAでフジコさんのコンサートがあり友人の会社でチケットが入ったからと招待され行ったのが初めて生の彼女の演奏を聞いた時である。
いろんなジャンルの音楽が好きだけれど、あまりピアノのソロコンサートは行った事がなかった。
拍手喝采のアンコールが続く熱気の中で早々席を立った私が向った先は楽屋裏の入り口。
そして気がついたらフジコさんと握手をしていた。
その時に驚いたのはあんな力強いピアノを弾く彼女の手がまるで撞きたてのお餅のように白くフワフワと柔らかかった事だ。指の関節も骨の感触も感じられないほど丸くてふんわりした手だった。
うまく表現が出来ないのだが、まるで人間の手の感触がしなかった。それほど不思議な感覚だった。フジコさんの前に立っている私を見つけて″あれ、何で貴方そこにいるの?″と報道関係者で友人の一人から声をかけられた。
何でその場にいるのか私も良くわからなかった。何かいても立ってもいられなくフジコさんに会ってみた い衝動にかられそこまで来てしまったのだ。それに偶然誰も止める人もガードマンも居なかった。
そんなフジコさんの思い出話を彼女にしながらフジコさんの音楽をバックに聴きつつ料理の準備が出来上がった。
出てきた料理はどれも皆スパイスを上手に使った美味しい料理だった。おまけに極めつけは
ブラックチェリーと蜜のかかった3種類のアイスクリーム。
″あ〜これでまた丸くなる〜″日本で美味しいものを食べてウェイトが増えた私は心の中で呟いた。腹八分で止めればいいのに大抵のアメリカ人は充分過ぎるほど食べて食べきれないぶんを更にテイクアウトする。その上、半端じゃないほどのボリュームのデザートを別腹で食べる。これが習慣になっている。これで肥らなかったら病気だろうし、肥れば肥満という病気になる。もう、デザートは、ほんの少しだけでいいのにと思ったが言う前に時すでに遅し、彼女はりアイスクリームをてんこ盛りにして私の前に出してくれた。
観念した私は、またハイキングに勤しめばいいやとそのアイスクリームをペロリと間食してしまったが
ふとお腹をすかせた動物たちの事も脳裏に浮かんでちょっと罪の意識を感じた。
茶子 スパイス研究家 |