3月のスパイス ローズマリー
3月になると、ここサウスベイ パロスバーデスの山はカラフルな花で彩られる。この花や新芽が芽吹く少し前が一番大地からのエネルギーを一感じる。こういう時期に山を歩くと益々元気になる。太陽の光も艶々で若葉の緑がいつもより眩しく見える。鳥のさえずりも春の訪れが嬉しくてたまらないという感じで実に気持ち良さそうにのびのびと唄っているように聞こえる。
こちらのファーマーズマーケットの店頭にも野菜や花やフルーツが色とりどりたくさん並び始めるので楽しい。
私の一番好きな花の香り、フリージアのシーズンも今頃だ。この写真のフリージアが咲いている店先
の少し先の方には地元の人が散歩するハイキングトレイルがある。右手にはPVから見下ろす青い海が広がっている。看板も何も出ていないのであまり人がいないく静かでいい。今日はここを歩きながら道端に生えているセージ、ローズマリー、フェンネルなどのスパイスをピックアップしてきた。先週友達の家の庭の草刈を手伝った時にも元気なローズマリーがあった。
ローズマリーをくれた友人のMさんの畑はミミズがたくさんいる肥沃な土で黒くてやわらかくフワフワしている。化学肥料を一切使わない代わりに、お米のとぎ汁をかけたりしてよく面倒を見ている。忙しい仕事の合間に時間を見つけてはせっせと畑作りをしている。彼女とお野菜の関係は興味深い体験があるのだか、またそのうち私のスパイスエッセイで登場してもらおうと思う。ともかく去年はこのMさんの裏庭からトマト、キュウリ、茄子、紫蘇、茗荷、大根などなどたくさんのお野菜が出来た。私もそのお裾分けを頂いたが栄養がギュっと詰まった感じのお野菜は昔、子供の頃に食べたお野菜を髣髴させる味で本当に美味しかった。今年もこの種蒔きのシーズン前に土地を耕さないといけないらしい。まずはボウボウに伸びきった雑草抜きからということで、私たち2人は午前8時からお昼ぐらいまでせっせと雑草を抜いて気持ちのいい汗をかいた。
写真は草刈前と後。全部は終わらなかったけれど、とりあえず第一回目が終了した。
土に触れている人は元気だと言うが本当にそう思う。草の匂いを嗅ぎながら太陽の下で汗をかいていると頭がすっきりしてくるし緑が目に心地良い。さて、そういうわけで今回3月のスパイスとしてこのMさんの庭から摘んできたローズマリーを取り上げてみた。
2つある写真の一つがMさんの庭から、もう一つは散歩道に咲いていた薄青紫の花をつけたローズマリー。
ローズマリーは植物学的にはシソ科の常緑小潅木。口に入れると爽やかな苦味があり強い芳香がある。
それが肉の臭みをとるのに適しているのでラム(羊肉)や豚肉、鶏肉料理などに向いている。
日本人には、ちょっと強烈すぎてあまり好まれないかもしれない。以前友達が夕食にラムを焼いて招待してくれた。ラムも臭いしローズマリーもちょっと苦手だなーと思ったけれど食べたら今まで食べた、どのラム料理よりも美味しかった。あのアクのあるラムの匂いに負けないくらいローズマリーの芳香は強く長く持続する。でも、その芳香が表に出すぎず、しっかりラムの臭みを包み込んで見事に調和していた。それ以来、ラムもローズマリーも好きになった。時々、ジャガイモのバター炒めの仕上げにガーリックと一緒にローズマリーが少しカリッとするくらいに炒めて使う。ローズマリーもキャラウェイ同様、クッキーに入れて焼くと個性的な味になる。
スパイスには4つの基本作用というのがあって
@香り付け作用 A臭み消し作用 B辛味作用 C色付け作用 と別けられる。
例にあげると@の香り付けはバジル A臭み消しはローズマリー B辛味作用はレッドペッパー
C色付け作用はサフラン もちろん重複しているものもあってレッドペッパーのように第1作用が
B辛味作用、2次的作用としてC色付け作用と重複している作用があるものもある。
スパイスは全てこの4つの基本作用のどこかにあてはまります。
そして今回のローズマリーは、この基本作用の中で第1作用はAの臭み消し2次的作用は@香り付け
としての作用があります。
今回は新鮮なローズマリーを早速、グレープシードオイルに漬けてみた。いつもはオリーブオイルを使うのだが今回はくせのない軽めのオイルを選んでみた。
このオイルをそのままフランスパンにつけて食べてもいいけれどガーリックパウダーやシーソルトをオイルにミックスしたものをハケでパンに塗ってトーストしても美味しい。この場合、ローズマリーのスパイスは香りをオイルに移すだけで食べなくてもいい。スパイスは直接食べるものもあるけれどシナモンスティックのように香りだけを移してスパイスそのものは食べないという姿は見えないけれど香りだけを残すという本当にこれこそ隠し味的にスパイスを使う方法もある。
ローズマリーの成分はシオネール、ロスマリン酸、カルノミン酸、ラビアータ酸などなど抗酸化、抗菌作用があるものが含まれている。応用として、ちょっと古くなったお酒に、このローズマリーを入れると味が蘇るそうだ。古くなるほどキープしたことがないので、まだ試した事がないが、いつかどこかで試してみようと思っている。
また、ローズマリーは ″記憶のスパイス ″とも呼ばれている。最近の研究やアルファー波の実験によるとローズマリーの成分シオネールは脳の血流を増やす働きがあるのがわかってきたそうだ。
昔の人はそんな事をわかっていたのか、古代ローマでもローズマリーは頭脳が明晰になり記憶力が冴えると言い伝えられ昔のギリシャの学生たちも試験前、髪にローズマリーの花輪を編んでつけ試験に挑んでいたそうだ。また、ハムレットの恋人オフィーリアは″私の事を忘れないでね ″と別れ際にそっとローズマリーをハムレットに手渡したらしい…
この香りと記憶の関係も調べると面白そうだ。
またハンガリーの古い伝説で若返りの冷水として錬金術師に作らせた薬水の中にもローズマリーが登場している。何だか眉唾ものかもしれないけれど、そんな美容効果のあるローションが本当にあったら是非試してみたいしチャレンジして作ってみたいとも思った。
他にもローズマリーは昔から薬用効果があるので西洋の民間薬としてローズマリーのエッセンシャルオイルを体のマッサージに使ったり、湿布したり、頭痛の時はそれで頭皮マッサージをしていたらしい。今もローズマリー入りのシャンプーなど売られているし、エステやアロマセラピーの人の間でローズマリーは活躍している。
また飲み物としてローズマリーを健康茶としても飲まれている。
最後にもう一つ、春風が吹くこのシーズンは風に舞って菌やウィルスが飛ぶので風邪対策としてマスクの間にローズマリーの小枝を挟んでおくと抗菌作用があると聞いた。
今週末、日本では、おひな祭り。翌週は啓蟄といって冬に冬眠中だった虫が暖かくなって土から這い出てくるシーズンだが春の風にお気をつけて…
茶子 スパイス研究家 |