龍翁余話(199)「和洋文化が溶け合う街・広尾」
今年1月9日号の『余話』「始めようメタボ予防」から“龍翁のご近所散歩”が始まり、
「梅は咲いたか・・・」(164号)、「文豪・尾崎士郎と大相撲」(167号)、「馬込文士村」(169号)、「等々力渓谷」(193号)に続いて今号で6回目の“ご近所散歩”は「和洋文化が溶け合う街・広尾」。翁の住む西五反田から徒歩だと約1時間、ご近所散歩にしてはちょっと遠いので車で出かけた。現地(広尾界隈)で散歩すればいいのだから、と都合のいいように解釈して・・・その広尾という所、翁はしょっちゅう車で通っているのだが、これまでにゆっくりと散策したことがない。では、何故、今ごろ広尾へ?実はつい先日、俳優・地井武男のポルタージュ番組『ちい散歩』(テレビ朝日系)を視て急に思い立ったのだ。台風一過、お彼岸の中日(23日)、ようやく訪れた秋風に誘われて・・・
広尾は、グルメ飲食、ビューティ、ファッション、趣味・雑貨、食品など約124軒がショップリストに登録されており、渋谷、恵比寿、六本木と並ぶセレブ・エリア、とされているが、翁の印象としては「ここはまるで外国の街」それもそのはず広尾界隈にはフランス、オーストリア、ノルウエー、スイス、パキスタン、イラン、ラオスなど30カ国以上の駐日大使館が点在しており、まるで“エンバシイ・タウン(大使館の町)”の観を呈している。広尾の町のランドマーク的存在の『広尾プラザ(明治屋)フードセンター』近くの路上(パーキング・エリア)に車を止めて歩く。広尾交差点から有栖川宮記念公園へ行く途中にあるオープン・カフェはアメリカやヨーロッパの街角を連想させる雰囲気。公園入口のはす向かいにあるスーパーマーケット『ナショナル麻布』(1962年開業)も外観からして日本のスーパーではない。中に入って見た。
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買い物客は大使館員の家族や外資系企業の関係者だろうか、殆んど外国人。陳列品も“舶来品”が多い。そのスーパーの入口付近にワゴン・カーがあり、インド人らしき若者が「ドネルケバブ・サンド、美味しいよ」と叫んでいる。翁「ドネルケバブ・サンドって何だ?」と訊ねたら、その若者が「ドネルケバブは、トルコ語で“回る焼肉”という意味です。肉を何重にも巻いてグリルでグルグル回しながら焼くと、余分な脂が落ち、ヘルシーな焼肉になります。その肉を削ぎ取ってパンの中に野菜と一緒に挟みこみ、ピリ辛の特製ソースをかけて食べます。美味しいですよ」実に流暢な日本語だ。「日本に来て何年になる?」「4年です」好印象のインド青年だったから、そのサンドイッチを買おうと思ったが(次回にしよう)・・・と、ここまでは外国ムードがいっぱいの表情だが『有栖川宮記念公園』に入ると、そこはもう完全な日本文化のエリア。
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この公園は、もともとは忠臣蔵で有名な浅野家下屋敷があったところ。適度の起伏があってちょっとしたハイキングコース風、翁のメタボ対策散歩には格好の場所。有栖川宮
熾仁親王(ありすがわのみや
たるひとしんのう)――幕末に(親王が17歳の時)孝明天皇(明治天皇の父君)の妹・和宮様と婚約していたのに、時の大老・井伊直弼らの策略で第14代徳川将軍家茂(いえもち)との結婚話が進められ、熾仁親王は(和宮様との婚約を)泣く泣く辞退させられた話は有名。有栖川宮は江戸時代に創設された宮家であったが、1913年(大正2年)に断絶、しかし大正天皇の第3皇子・光宮宣仁親王(てるのみやのぶひとしんのう)(昭和天皇の弟君)が高松宮を興し有栖川宮の祭祀を継承した。ところで、2003年に東京で発生した“有栖川宮詐欺事件”ご記憶だろうか?有栖川宮の祭祀継承者であると偽った男がニセの結婚披露宴を開催、約400人の招待客を集め、かなりの祝儀を騙し取った。その男、3年の刑の後、出所して今でも
“有栖川宮何某”を名乗っているそうだ。
広尾散歩街を縦断する広い道(外苑西通り)をはさんで日本最初の女子大学の1つ『聖心女子大学』がある。1916年(大正5年)に創立された聖心女子学院高等専門学校を前身とし、1948年(昭和23年)の新学制により聖心女子大学として新しく発足、元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんは新生大学の第1期生であり、皇后陛下美智子様も当大学のご出身。実は翁の恩人のお嬢さんも同校の卒業生で、20数年前、彼女が結婚する時、同大学構内のチャペル(聖堂)で挙式した。その時、翁もキャンパスを案内して貰ったが、この大学はイエス・キリストの聖心(みこころ)を中心とした共同体で「神と向き合う(祈りの)時間は、自分を見失うことなく愛によって生きていくための糧となる」というコンセプトが強烈に印象に残っている。
「和洋文化が溶け合う街・広尾」の散策は日本文化で締めようと(『ちい散歩』同様)外苑西通りと明治通りが交差する場所にある『多門山・天現寺』へ行った。狛犬ならぬ狛虎の話が面白いのだが、スペースの関係で後日改めて・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |