龍翁余話(193)「等々力渓谷」
このところクーラー無しでは眠れない。翁は普段、外出日は、だいたい10時ごろ出かけ、夕方5時頃には帰宅する。直ぐにクーラーをつけ、以後、朝方3時頃までかけっ放し。朝は6時頃起床、その日の気象(気温、風、雨)にもよるが8時頃には再びクーラーを回す。お盆前の某日、この日の朝も“熱帯夜”に続く“熱帯朝”だった。8時頃には我が家の室内温度計は、すでに30度に達しようとしていた。当然、クーラーを動かした。テレビニュースが“熱中症で救急搬送された人は過去最多”を報じている。『消防庁の発表によると、今年5月30日から7月31日までの2ヶ月間に熱中症で救急搬送された人は全国で2万4790人(前年同期を約3600人上回っています)、このうち死者は43人。7月に限ると救急搬送された人は全国で1万7788人、これは集計を開始した2008年以降、最も多い数字です。年齢別にみますと』・・・
翁、どういう心理が働いたのか、そのニュースを聴いて急に“チクショウ、猛暑に負けてたまるか”という若気がムラムラと持ち上がった。幸い、今日はヒマだ、一日中、家の中でブラブラしているのは勿体ない。翁、今年の正月からメタボ予防のために『龍翁のご近所散歩』をこころみており、『余話』でこれまでに数回書いた。ならば、今日はどこへ行こうかと“ご近所マップ”を開いた。真っ先に目に止まったのが“等々力(とどろき)渓谷”(世田谷区)、アクセスは池上線戸越銀座から旗の台で東急大井町線に乗り換え、等々力駅下車、我が家から30分くらいだろうか?こんな近場なのに、まだ一度も行ったことがない。よし決めた、肝試し(体力試し)を兼ね、涼と静を求めて、いざ、等々力渓谷へ――
翁の(夏の)散歩時は、ジーパン、Tシャツ、帽子、スニーカーがお決まりの格好。そしてショルダー・バッグにはカメラ、メモ用紙、ペン、タオル、飴玉、水筒などを詰め込む。正直、準備している間“おいおい、この猛暑の中、本当に出かけるのか?救急車のお世話になったらどうする?止めたほうが賢明だよ”と、もう一人の自分がさかんにブレーキをかける。だが、頑固者の翁、思い立ったら止まらない。気力充実、体調良好、用意(準備)周到、“これだけの好条件が揃ってなおアクシデントが起きたら、俺の命運もそこまで”と(かなりオーバーな)覚悟を決めて10時に家を出た。いやいや、外は暑い、と言うより熱くて痛い。戸越銀座駅までの4分の間に、もう汗びっしょり。“引き返すか?”ともう一人の自分が再び囁く。“バカ言うんじゃない、初志貫徹だ”と、ここでも青臭い“決意表明”、そんなにキバルほどのことでもないのに、自分でも可笑しくなって吹き出す。
大井町線旗の台駅から7つ目、等々力駅(無人駅)で下車、改札口の傍にある案内板に従って『等々力渓谷』へ。赤い欄干の『ゴルフ橋』の脇を下る。この近く(今の玉川野毛町公園)に昭和14年まで9ホールのゴルフ場があったそうだ。鬱蒼とした樹木と川のせせらぎ。一瞬“え?ここは東京都か?
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と錯覚を覚えるほどの別天地。静寂と涼感が心地いい。東京23区唯一の正真正銘の渓谷だ。幅1mほどの歩道と川幅(平均)4mの『谷沢川(やざわがわ)』。資料によると世田谷区桜丘5丁目付近の湧水に源を発し、上用賀地内の複数の湧水と合わさって等々力渓谷を経由し多摩川に合流する、とある。谷沢川に沿ってしばらく下ると、左の土手に『等々力渓谷横穴古墳』がある。解説板には古墳時代後期から奈良時代(7世紀後半〜8世紀)のこの地の豪族の墓で金属製の耳輪やガラス玉などと一緒
に男女と子どもの3体の人骨が発見されたと記されている。突き当たりのガラス窓(写真左)から中を覗いてみたが真っ暗だった。そこから500m下ると右側の奥に幼児期の弘法大師を祀る『稚児大師堂』、更に100m先に『稲荷堂』。何でこんな所にお稲荷さんが祀られているのか立て札が見当たらなかったので分からないが、その右側の岩崖に『不動の滝』がある。(左右2頭の)龍の口から2条の霊水が数千年もの間、一時の休みもなく勢いよく流れ落ち、下の石板に当たって重厚な音を轟かせている。故に“とどろき”と命名されたそうだ。“等々力”は多分、当て字だろう。片道約1キロの終点地に“冠木(かぶき)門”(左右に横木を渡しただけの屋根のない門)があり、中は、なだらかな丘陵の日本庭園、その頂上に『書院』があって、お茶や冷水が自由に飲める。管理者の年配の男性が翁の(空の)水筒を見て「よろしかったら、どうぞ、いっぱい入れて行って下さい」と親切に言ってくれた。感謝してお言葉に甘えた。
渓谷内のゆっくり散策は往復2キロ、延べ約2時間。たいして疲労感はない。猛暑に勝った、とは、少々大げさだが、痛快(爽快)な気分を味わったことは言うまでもない。それにしても、今日は大量の汗をかいたので、かなり減量できたはずだと期待してシャワーのあと体重計に乗ったが、ああ無情!――思えば、(夏場は隔週)土曜日のゴルフで18ホールを4時間かけて回るのだが、いくら汗をかいても水をガブガブ飲み、ランチもたらふく食べるので体重はいっこうに減らない。翁の場合、ゴルフも散歩も減量対策にはならないが基礎体力強化には少しは役立っていると信じて、これからもゴルフも“ご近所散歩”も続けることにする・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |