2007年もあと数日となりました。派手なことが大好きなこちらアメリカでは、クリスマス・年末シーズンということで、ショッピング・モールから一般住宅まで賑やかな飾り付けを施し、歳末を楽しんでいます。
今年のアメリカは所謂「サブプライム・ローン」に端を発した金融不安などの影響もあり、必ずしもも景気は良好とは言えませんが、それでも街のショッピング・モールや一般家庭は例年にも増して年末ホリデー・シーズンの飾り付けを派手に明るくしています。
ところで、今年のクリスマスは既に終わってしまったので、話題としては遅い感じになりますが、米国ではキリスト教だけを重視する「クリスマス」という表現は、キリスト教以外の宗教に対し公正を欠くという理由で、公共の場所では使わないのが普通です。
アメリカには「ポリティカル・コレクトネス(political correctness、略してPC)という言葉があります。PC
とは、性・民族・宗教などによる差別や偏見、またそれに基づく社会制度は是正すべきとする考え方のことです。クリスマスは国家の重要な祝日ですが、多民族・多宗教の存在するこの国ですので、このP.C.の考えにもとづき政府機関はもちろんのこと、商店街や一般企業の飾りも多宗教に配慮して「メリー・クリスマス」とせず「ハッピー・ホリデーズ」とするのが普通になっています。ですから「クリスマス・ツリー」も公共の場所では「ホリデー・ツリー」になるわけです。
キリスト教の個人や個別の家庭は当然のことながら「メリー・クリスマス」で「クリスマス・ツリー」と言っています。
★2007年年末商戦
さて、目下、こちらアメリカは歳末商戦たけなわです。アメリカの場合、通常、歳末商戦は11月の第3木曜日の感謝祭休日(サンクス・ギビング・デイ)の翌日の金曜日(ブラック・フライデー)から始まります。
「ブラック・フライデー」と言ってもこの場合は「暗黒の金曜日」という暗いイメージではなく、「感謝祭明けの金曜日はセールで小売店の収支が黒字になる」といった意味が含まれています。また最近では、その次の週明け月曜日は職場の高速回線を利用したウェブ通販でプレゼントを購入する人が多いことから感謝祭休み明けの月曜日を「サイバー・マンデー」と呼ぶようにもなっています。
一般に、小売店にとって感謝祭明けからクリスマスまでのひと月の売上だけで年間の約半分を占めると言われています。したがって小売店やその関係者にとって、歳末商戦の結果が年間ビジネスの死命を決するといっても過言ではありません。
今年、2007年の歳末商戦はまだ終わっていませんので、結果はわかりませんが、少なくともブラック・フライデーとサイバー・マンデーの出だしは好調で、好況だった前年同期と比べても10%を超える売上増加だったようです。私たち夫婦も感謝祭明けの数日間、近くのショッピング・モールを数ヶ所まわってみましたが、どこも駐車場は車であふれ賑わっていました。
ただし、ここ数日のニュースによると、年末に近づくにつれて購買客の出足が昨年ほどは伸びていないとのこと、全米小売業協会(NRF)のレポートでも、買い物客数は昨年に比べて増加しているものゝ、1人当たりの平均購入額は同5%近く落ち込んでいるとのことです。
薄型テレビやゲーム機などの家電製品の売れ行きは好調のようですが、原油高、ドル安、住宅着工数の減少、前記の金融不安、さらには中国製玩具などの有害製品リコールなどのマイナス要因が購買意欲を殺いでいるのでしょうか。年明けに発表される歳末商戦結果の発表が気にかかるところです。
★日系社会の歳末助け合い
年末の街角からはサルベーション・アーミー(救世軍)のベルの音が聞こえ、年の瀬の募金活動が始ました。
慈善と互助とボランティアの先進国であるここアメリカでは特に年末になると各種団体が慈善事業の一環としての募金活動を盛んに行います。
私たち日系のコミュニティでも年末恒例の「歳末助け合い募金運動」を実施しています。この活動は当地の日系ビジネス団体の中心である南加日系商工会議所(今年は若尾龍彦さんが会頭です)を筆頭に日系諸団体が協力して行っているもので今年は13回目になりました。
先の12月1日(土)、ロサンゼルスと周辺の9ヶ所の日系スーパー・マーケット各店頭で一斉にスタートしました。今年は集まった募金は主として日系敬老シニア・ヘルスケアに寄贈、老朽化が進むボイルハイツ敬老引退者ホームの大食堂改修費にあてる予定になっています。
私たちの先輩である米国への日系移民は明治初年から始まり、戦前・戦中・戦後を通じて苦難の道をたどり今の日系人の基礎を築いてくれました。今では日系人も三世、四世の人たちが中心になっており、それ以前の皆さんは老齢化が進み、それらの皆さんのために日系の敬老施設があります。それが日系シニア・ヘルスケアであり、敬老引退者ホームです。
アメリカも国家や州レベルでの財政は逼迫しており、これら福祉施設への補助が充分ではありません。不足分はこのような慈善と互助とボランティアで補うことになります。
日系コミュニティによる「歳末助け合い募金」は私たちロサンゼルスとその周辺に在住する日本人が米国に基礎を築いてくれた日系諸先輩に対する感謝の運動であり、重要な行事として根付いています。
今年も募金活動のキックオフ・セレモニーでは日本商工会議所メンバーを始め、日系諸団体、県人会の代表など、さらに在ロサンゼルス日本国総領事館からも主席領事、今年の二世週祭りで選ばれた二世クイーンのお嬢さんたちが参加、助け合いの精神の大切さを訴え、協力を呼びかけました。この募金のために300人を超えるボランティアが協力しています。今年の募金は年末まで継続中ですので総募金額は確定していませんが、昨年は1万ドルを越える浄財が集まりました。この歳末募金運動は今では当地では歳末の風物詩としてすっかり定着した感じです。
河合将介(skawai@earthlink.net) |