龍翁余話(574)「創作猫展」
今年の4月、翁の住むマンションの「管理組合規約」の1部が改定された。当マンション建築以来、40数年ぶり(初めて)の1部改定である。その改定の1つに(それまで不可とされていた)「ペット飼育」が認められるようになった。条件付きではあるが常識的な範囲での犬・猫が飼育出来るようになった。と言っても翁自身は全く飼う気はないが、住人の中には大喜びしている人もいるとか――
聞くところによると2013年頃から“空前のペットブーム”が続いているらしい。確かに街を歩いていると“犬との散歩者”を多く見かけるしネコを飼う家庭も増えているそうだ。
ある調査によると日本での犬猫の飼育数は約2000万匹、これは15歳未満の子どもの数(約1600万人)を越えているとのこと。テレビやSNSでも愛らしい犬猫の画像や動画が人気を博している。翁、たまにNHK-BSプレミアムの『岩合光昭の世界ネコ歩き』を視ることがある。どちらかと言うと“犬派”の翁だが、この番組に登場する猫の目・耳・尾っぽの動かし方、仕草などで何となく猫の気持ちが分かるような気がして時にはニヤッとしたり、声を出して笑ったりで、ついつい視入ってしまう。
文字通り“猫可愛がり”している70歳代後半の友人(かつての仕事仲間)がいる。数年前まで孫を“猫っ可愛がり”していて、いつも孫の写真を持ち歩いていたが、その孫が小学校に上がるや“爺ちゃん離れ”し出した結果、以後は愛猫の写真を(翁に)見せびらかすようになった。翁が「俺、猫は嫌いなんだ。子供の頃に観た映画『佐賀・鍋島藩の化け猫騒動』(入江たか子主演)を思い出して気持ち悪い」と言うと、彼「プライドが高くマイペースで行動する猫の特徴と龍翁さんは似通っているので、てっきり“愛猫家”と思っていたのですが・・・我が家のリリーちゃん(猫の名前)は、すでに我が家の家族の一員です。もう10歳ですが可愛いもんです」――ちなみに猫の10歳は人間の50歳代に相当するので、もはや彼の愛猫も“老域”に達している。老人と老猫が仲良くじゃれ合う光景を想像して微笑ましく思うのだが、また、寂しくも感じる。
さて、翁宅のご近所の友人Tさんのお誘いで先日、目黒・雅叙園の“百段階段”で開催されている『猫都(ニャンと)アイドル展』(創作猫展)を(19日終了の寸前に)観に行った。猫にはそれほどの興味はなかったが“百段階段”をもう一度見たくてご一緒した。“もう一度見たい”と言うのは、実は10年前に行ったことがあるのだ(『龍翁余話』(105)に掲載)。東京都有形文化財に指定されている“百段階段”は“昭和の竜宮城”とも呼ばれ、太宰治の小説『佳日』にも登場している。階段廊下の南側には7つの部屋があり、床柱・襖絵・障子・天井まで、それはそれは豪華絢爛な装飾が施されていて見る人を圧倒する。その感動をもう一度味わいたかったのだ。
“猫にはそれほどの興味はなかった”はずなのに、会場のエントランスに展示されている“ウエルカム・ニャン”(上写真左)を見た途端、「おう、可愛いね」が口を衝いた。約30人のアーティストによる“猫アート”作品は約3000点。最初の部屋「十畝(じっぽ)の間」では羊毛作家・佐藤法雪による、漫画家・赤塚不二夫さんの愛猫で「バンザイする猫」として有名だった「菊千代」が2.5mの大きさで出迎える(上写真2番目)。「漁樵(ぎょしょう)の間」では造形作家・小澤康磨らの「浮世絵風」(上写真3番目)作品が約20点。「静水(せいすい)の間」では創作人形作家・石渡いくよの「源氏物語」(上写真右)、「清方(きよかた)の間」では陶芸家・水谷満の「大相撲“目黒場所”」(下写真左)、「星光(せいこう)の間」では人形作家・あべ夏の「猫耳ドール」やイラストレーター・おおやぎえいこの「レコードジャケット」など。「頂上の間」では、もりわじん作「おみくじ猫百覧会」、中央に「おみくじ猫大明神」(下写真中)が鎮座しており、ほかにユニークな福猫(下写真右)100種を一堂に展示している。
猫に関する諺には、あまりいいものがない。例えば「猫撫で声に騙されるな」「犬は3日の恩を3年忘れないが、猫は3年の恩を3日で忘れる」「猫に小判」。しかし「招き猫」と言う“縁起猫”もいる。右手(右前脚)を挙げている猫は金運を招き、左手(左前脚)を挙げている猫は人(客)を招くとされる。猫の色によっても意味が異なる。黒い猫は“夜でも目が見える”の理由から「福猫」として魔除けや幸運の象徴とされ、赤い猫は病除けの意味を持つそうだ。それはともかく『猫都(ニャンと)アイドル展』で翁の猫に対する印象が変わった。“化け猫”のイメージが飛んで“可愛い”、と思うようになった。誘ってくれたTさんに感謝。生き物は飼うのは大変だし死別が辛いので、せめて黒・赤の招き猫のぬいぐるみを部屋に置きたいという気分にもなっている。独居老人の翁、ぬいぐるみでも“猫っ可愛がり”するかも・・・と、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |