龍翁余話(573)「等々力緑地」
友人たちから「龍翁さん、この大型連休の計画は?」とか「何処かへ行かれましたか?」など訊かれたが、高齢者になってからの翁は混雑を避けるため、休日は外出を控えることが多く、特に連休は“家籠り”を決めこんでいる。ましてや今年の4月30日は「第125代天皇ご退位の日」(平成が終る日)、5月1日は「第126代天皇ご即位の日」(令和が始まる日)という歴史的御代替わり(元号替わり)の日であったから、自宅でずっとテレビにしがみついた。この2日間は、繰り返しテレビが伝えた上皇・上皇后両陛下、天皇・皇后両陛下の“思い出の映像”に翁自身の思い出を重ねて、我が半生を振り返る機会でもあった。
“家籠り”をしていたある日、(月に2,3回、昼食会をしている)シニア会の幹事君から「連休明けにグループで『等々力(とどろき)緑地』へ行きませんか?」の誘いがあった。翁、勘違いをして「世田谷の等々力渓谷なら、私はもう2回も行っている」と答えたら幹事君「いえ、川崎市中原区の等々力です」――早速、インターネットで調べたら野球場・プール・テニスコート・陸上競技場(サッカー場=Jリーグ川崎フロンターレのホームスタジアム)などのスポーツ施設群のほかミュージアム(博物館)・イベント広場、そして釣り池・四季園(花壇)・緑の散歩道など自然との触れ合いを楽しめる広域公園、とある。翁は(スポーツ施設はどうでもいいが)緑の散歩道、花壇、釣り池に魅力を感じて参加することにした。
連休明けの某日、10時半に東急目黒線・武蔵小杉駅で5人の仲間と合流、バスで約7分、全員(翁を加えて6人)が初めてなので、市営等々力グランド前で下車したものの、どこが入り口か分からない。入園料が無料なので、どこからでもどうぞ、ということだろう。道路脇の“案内図”を見て想像以上の広さに驚いた。総面積435,914u(約13万2,000坪)、東京ドーム(建築面積)46,755u(約1万4,200坪)の約9.5倍の広さだそうだ。誰かが言った「これを全部歩くのは大変だから目的場所を決めようよ」勿論、翁も大賛成。地図を手にした幹事君の「目的場所は(翁の提案で)『ふるさとの森』(緑の散歩道)、『花壇』、『釣り池』にして、とりあえず目の前の『野球場』の脇から散策を開始しましょう」に従うことにした。この『野球場』(「川崎球場」)は高校野球の予選や社会人野球大会の開催が多く、将来はプロ野球の試合が可能な施設にする計画だそうだ。
『野球場』と向かい側の『催し物広場』(いろいろな遊具が設置されている子どもの遊び場)の間を歩いて行くと右側にかなり広い『運動広場』、左側に『とどろきアリーナ』がある。アリーナとは、傾斜がある階段状の観客席に全周囲まれた競技場(または劇場)のことだが『とどろきアリーナ』も大規模の各種競技会・音楽会・集会・式典・展示会など多目的に使用されているそうだ。更に歩くと『市民ミュージアム』がある。各種美術・工芸の展示会が催されるとのこと。ここまでかなり歩いた。スマホの歩数計を見たら、すでに4,000歩を超えている。そろそろ足が重くなりお腹も空いて来た。『ふるさとの森』(緑の散歩道)に入った。約4,600坪もあるオアシス(フレッシュエリア)だ。幸いに人影もまばら。3人掛けのベンチが2つ空いていて3人ずつに分かれて座り、各自が武蔵小杉駅近くのコンビニで仕入れたオニギリ、サンドイッチ、飲み物などを、それぞれ持参のリュックサック(翁はショルダーバッグ)から取り出し勢いよく食べ始めた。翁は、明太子のオムスビ1個とアンパン1個をウーロン茶で流し込んだ。
食後、各自は1時間ほど気ままに過ごした。周辺を散歩する人、芝生の上でゴロ寝をする人、翁は3人の談笑組に加わった。「動中静あり。東京から多摩川を越えて直ぐの所に、こんな素晴らしいレクリエーション(レジャー、スポーツに興じ、自然に親しむ)施設があるなんて、知らなかった」「秋にまた来たいね」翁も同感だ。サッカー好き(川崎フロンターレのファン)なら、たびたび足を運ぶだろう。だが、今日のメンバーは(翁を含め)サッカーとは縁遠い人ばかりのようだ。
『ふるさとの森』を抜けると『陸上競技場』(25,000人収容のサッカー場)があり、その近くに『花壇』が四季を彩っている。誰かが「パンジーとルピナス」と言った。草花の知識に疎い翁だが、その美しさに魅かれ、数カットをスマホに収めた。美しさ、と言えば『釣り池』の脇に咲いている真っ赤なツツジ。この鮮やかな真紅色に皆が息を呑み、さかんにスマホを動かしていた。約1万坪もある広い『釣り池』。1日750円(15歳以下は200円)、常連はシニア層だが家族連れも多いそうだ。釣れる魚はヘラブナ。2匹まで持ち帰りが出来る。売店でエサは売っているが釣竿は持参とのこと。翁もいつか・・・
よく歩いた。歩数計は1万歩を越えた。勿論疲れたが、それは実に心地良い疲れであった。武蔵小杉駅では全員が満足の笑顔で解散した。翁にとっても“最良の休日”であった。誘ってくれた世話役の幹事君に感謝・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |