和菓子
先日、Gardenaのショッピングモールにある和菓子屋さんにふらりと入ってみた。何となく昔懐かしさを感じる和菓子屋さんだな〜と入って見てみたら昔食べた事のある和菓子が記憶の彼方から蘇ってきた。“すあま”という上新粉を湯でこねて蒸したものや栗饅頭や芋饅頭など最近は、あまり見かけなくなった和菓子だ。黄粉餅、おはぎ、大福、どら焼きなど昔からの定番の和菓子に加えてお赤飯なども売られていた。
それらが素朴な木枠の箱の中に綺麗に並べられて歴史を感じさせるウィンドウケースの中に納まっている。最近はファッショナブルな和菓子や洋菓子とミックスしたような新しい形の和菓子も出回ってきているけれど私はやっぱりこの素朴さが好きだ。
久しぶりに入った和菓子屋さんで一つ一つの和菓子をじっくり眺めていたら何だか懐かしい気持ちになって、いろいろ和菓子に関してお店の人に質問してしまった。それでもお店の人は面倒がらずに丁寧に一つ一つ受け答えてくださった。ふと店内を見ると優しそうな眼差しでこちらを見ている人の写真と目が合った。“あの白髪で着物を着た女性の方が初代のオーナーの方ですか?”と聞くとお店の人は
頷いて“隣に並んでいる写真の人は2代目のお嬢さんです” そう言って一冊の本を私に見せてくれた。その本の表紙には創業100年と書かれてあって時代を感じさせる本だった。創業は1910年だからすでに104年も経つのだ。“この本は会社に入社したら必ず読まされる本で私も読みました”とお店の人が言っていた。パラパラと流し読みで本をめくっていたら何だかタイムスリップしたような気持ちになった。そして胸が熱くなった。彼女の名前は橋本ハルさん。昔はるばる海を越えて日本からこのアメ
リカにやってきた。戦前から戦後の波にもまれ和菓子屋の経営もどんなにか大変だったろうと思う。それでも日本人にとって和菓子は無くてはならない存在だったと思うし、どれだけの日本人をこの美味しい和菓子で幸せな気持ちにさせたことだろう。四季折々日本の伝統行事や祝い事、お祭りに和菓子は欠かせない。お正月にはお餅を食べ、5月の節句には柏餅を食べお彼岸にはおはぎを食べ祝い事がある都度、紅白饅頭を頂き、そうやって私も育ってきた。最初に出来たリトル東京のお店には故郷日本の懐かしい味を求めて季節ごとに祝い事がある度に店の前には行列が出来たのだろう。何だかその様子が目に浮かぶようだ。アメリカのお菓子は甘すぎるくらい甘くこちらの和菓子もそういったアメリカ人の好みに合わせて甘いのだろうと思っていたら、嬉しい期待外れで昔からの日本の和菓子そのものの味だった。それは、ほんのり優しい甘さで心が和むような和菓子だった。昔から大事に受け継がれてきたであろう懐かしい味だった。そう言えば来週8日(月曜日)は15夜お月さんだ。すっかり忘れていたけれど、今年はススキを飾り好きなお団子をお供えしてお月さんをしみじみ眺めてみよう。
茶子 スパイス研究家 |