いちじく(無花果)
先月ぐらいから毎朝キッチンの窓越しから見える向かい側の家のイチジクの木にポツリ
ポツリと緑の実が付き始めているのに気が付いた。その実がだんだん色付いて黒くなってくると熟して食べ頃になるのだ。イチジクの名前の由来は毎日1個ずつ熟すのでイチジクとなったとも言われているらしいが、本当に一つ熟したらその後にまた一つという感じで熟していく。もう、そろそろ食べ頃かな〜と思った翌朝はその実がちゃんと無くなっていて、ああやっぱり、家主も見ているのだな〜という気持ちと何だかがっかりしたような気持ちにさせられる。他人の庭の果物なのだが毎朝見ていると何となく愛着がわくものだ。
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イチジク(ハート型)カット |
3種類のイチジク |
食べごろのイチジク |
数日前も明日はそろそろ食べ頃かなと思って翌朝そのイチジクを見たら何と鳥に半分ついばまれていた。鳥も食べ頃のタイミングを良くわかっている。未熟なイチジクは消化に良くないらしく鳥は決して青い実のうちは、ついばんだりしない。熟れてきたタイミングを見計らってすぐに採らないと鳥に先を越される。先週そんなイチジクの話をオックスナードのファームランドのオーナーと話していたら自分の庭の木に生っているちょうど食べ頃のイチジクを持ってきてくれた。イチジクでもいろいろ種類があるようでチョコレート味のものと緑の色をした3種類のイチジクを持ってきてくれた。イチジクは熟して皮が少し割れてきた頃が一番甘くて美味しいのだそうだ。食べてみるとやっぱり熟したものは甘さが全然違う。 “ 隣の庭のイチジクの枝がもう少しこっちに伸びてくれればいいのね ”と言ったら“ファームランドのオーナーの奥さんが” 駄目よ、採ったら怒られるから “と言ったらオーナーは ” No(ノー)食ったらええんだ、こちらの領土に侵入してきたらこっちで食ってええんだ “と言った。後1−2年すればイチジクの枝は塀を超えて伸びてきそうな勢いがある。今年はちょっと無理そうなので来年あたりに期待しよう。
イチジクのシーズンはちょうど8月から10月にかけて旬になるらしい。実はこのイチジク、実だとばかり思って食べていたら花なのだそうで実の中の赤い粒粒が詰まっているのが花なのだそうだ。オーナーのN氏がそう言って教えてくれるまでそんな事は全く知らなかった。漢字で無花果と書くが花の姿は房の中に隠れて見えない。植物学的にはクワ科のイチジク属に所属するらしい。原産地はアラビア半島南部、地中海沿岸地方からペルシャ、ヨーロッパ、中国とシルクロードを辿って日本の長崎にたどり着いたのは江戸時代だったそうだ。昔、イチジクを南蛮柿や唐柿と呼ばれていたのもその頃の歴史を感じさせる名前だ。それにしてもこのイチジクの歴史はかなり古いらしく古代エジプトの壁画にも書かれていたらしい。旧約聖書にもこのイチジクは数多く登場していて、あのアダムとイブが裸を隠すのに使われたあの葉っぱもイチジクの葉だっただそうである。何だか歴史のロマンを感じさせる植物なのだな〜と…
ペルシャ系のマーケットに行くと他のマーケットよりグレードのいいイチジクのドライフルーツやジャムが置いてある。そんなイチジクの効能はどうなのだろうかと調べてみたらペクチンが含まれていてあの粒粒がファイバーになり便秘にもいいそうなのだ。そう言えば昔、山下達郎がイチジク浣腸のCMソングを自作自演で作って唄っていた時期があったけれど、あのイチジク浣腸はイチジクの形に似ているという理由だけでなく本当に便秘解消の効能もあったのだ。イチジクが江戸時代に日本に伝えられた当初は薬用として栽培されていたそうだ。栄養学的にはカリウムが含まれていて血圧を下げる効果があるらしい。高血圧予防、動脈硬化予防,脳梗塞予防、心筋梗塞予防と成人病対策にもいいとされている。薬より美味しい旬の果物や野菜は副作用がないぶん安心して食べ続ける事が出来る。その他の効能を見てみるとイチジクはフィシンというたんぱく質分解酵素が含まれていて食後の消化促進の働きもあるようだ。イチジクの切断部から出てくる白い液にもたんぱく質分解酵素は含まれていて民間療法でもイボ取りに使われているとも書いてあった。昨年、オックスナードの農園で採れたての大きなイチジクをもいで食べた時、美味しかったけれどイチジクの木から出た白い液で手がベタベタになったのを思い出した。アメリカの民間療法の中にもイチジクの効能はいろいろ書いてあってまるで万能薬のようだ。この熟れたイチジクは私にとって少し甘すぎるので食べる時にレモンを少し絞ってかけて食べる。こうするとレモンのさっぱりとした酸っぱさとイチジクの甘さがミックスされて丁度いい甘さになるのだ。イチジクは収穫したらあまり持たないので、たくさんいただいたイチジクで今回ジャムを作ってみた。10分ほど煮詰めて少しブランデーとレモンと自分の好みで砂糖を入れてレモンを入れて作ってみた。こうやって作ってみるジャムなどは簡単に作れるものだ。残った果物も適当に刻んでこうやってジャムを作ると無添加の美味しいジャムに仕上がる。クラッカーでもパンでもハムでもプレーンヨーグルトにでも何にでも合うので是非、気が向いたらお試しを!
茶子 スパイス研究家 |