ユネスコの無形文化遺産 和食
無形文化遺産は、人から人へと伝えられてきた祭りやもの作りの技術などの価値を世界で認め、守っていくためのもので、2003年に出来たそうだ。そのユネスコの無形文化遺産に日本の和食が選ばれる可能性が出てきたというニュースを聞いた。東京オリンピックの決定に続いて心が弾むような嬉しい知らせだった。
先月ロスアンジェルスから来たご夫婦をエスコートして北陸方面を旅行してきた。彼らの目的の一つは美味しい日本の秋の味覚を楽しむ事だった。北陸にある昔からの老舗で、おもてなしの心とサービス
は日本1と言われている旅館に一泊する事になった。到着するとすぐに和服姿の旅館の女性が部屋を案内してくれた。そして暖かいお絞りとお菓子とお抹茶をその場で用意してくれた。久しぶりに触れる日本の行儀や礼儀作法そして丁寧な接客態度は実に気持ちがいいものだった。夕食は季節の食材をふんだんに取り入れたもので見た目にも綺麗で食べても美味しい見事なお料理だった。そのどれもが素材の持ち味を生かした味付けでバランスがとれている。この一回の夕食にどれだけ多種多彩な食材が使われているか、またどれだけ手間をかけているのだろうかと考えると本当に贅沢な夕食だと思った。めったに、こんな凝った料理は食べられないけれど日本には昔から1汁3菜という言葉があっ
て、主食のごはんを中心に1汁(味噌汁などの汁もの)3菜(おかず3種類)とバランスの摂れた食生活が基本になっている。こういう基本的な事を意識して献立を作ると自然に健康的な食生活になる。戦後、欧米文化と共に欧米の食事が日本に入ってきてアメリカのファーストフードは確実に日本に定着した。米からパン食になって味噌汁よりミルク、お漬物や煮ものよりサラダ、魚よりも肉と食生活が変化していったお陰で成人病も増えていったようだ。“ 日本人の腸には一番、米があっているんです ” と母のドクターが言ったそうだが、あの水分を含んだ一粒一粒のお米が消化にも良く即エネルギーになるのだそうだ。アメリカでも最近は寿司や天ぷらなどでなく、日本のお惣菜をおしゃれなカフェで食べさ
せてくれるお店が出来てきた。それもハリウッドの映画関係者などが住む街の近くにあるのだ。そのお惣菜を少しずつオーダーしてご飯に味噌汁を付けて食べているアメリカ人を見ていると不思議な感じがする。どこかの有名なシェフが作る高級食材を使った特別な料理ではなく、普通の日本の食卓に出されるお料理がアメリカ人にヘルシーで美味しいと受け入れられてきているのだ。今年もあっという間で気がつけば後2カ月と少しでお正月。生前、祖母はおせち料理を一週間前から準備して作っていた。そんなおせち料理を祖母が亡くなってからは誰も作る人がいなくなってしまった。“やっぱりお正月は、おせち料理を食べないとお正月が来た感じがしないよ“ と弟が言った。その言葉を聞いて今年の年末は伝統的な日本のおせち料理を作ってみようと思った。この12月には正式にアゼルパイジャンで登録が決まるらしいユネスコの無形文化遺産としての和食を弟夫婦の子供たちにも伝えていきたいと思った。今はファーストフードが好きな典型的な現代っ子だが、いつか、おせち料理を囲んで皆で食べた味を懐かしんでくれる時がきてくれたらな〜と…
茶子 スパイス研究家 |