サウスベイハイキング
スプリングタイムになってから急にLAは初夏を思わせるような陽気になった。日差しも強烈でサングラスがないと眩しすぎる。 こんな日は早朝のハイキングが気持ちいい。久しぶりに海沿いを歩いてみようと週末の朝出かけてみるとビーチではヨガをやっているいくつかのグループを見かけた。砂浜にビー
チタオルを広げて波の音を聞きながら潮風を受けてやるヨガは心身ともに解放感があっていい。今までモノトーンだった山や街も咲き始めたカラフルな花や木々の明るい緑で景色が益々明るくなっていく。癒し効果のある紫色のラベンダーも今がシーズンなのか、あちこちの店で見られる。どこからともなく匂ってくるいろいろな花の甘い香りもアロマ効果があって穏やかな気持ちにさせてくれる。 この時期は大地からのエネルギーを感じることが出来る、私が一番好きな季節だ。
太陽の光に触れる時間が1時間だけ長くなっただけなのに気分が違ってくる。今まで寒くてついつい億
劫になっていたイブニングハイクも先週から行き始めた。 ちょうど肉眼で見ることの出来るパンスター彗星が地球に接近している時で3月中旬から4月にかけて日の入り後の西の空に見られるというので、もしかしたらイブニングハイクの時に見られるチャンスがあるかもしれないとワクワクして出かけた。 日が西に傾き始めると空の色はどんどん変化してドラマティックなオレンジやピンク色に染め上げられて、あっという間にあたりは暗くなった。空が暗くなると今度は細い三日月のリングがちょうど下半分、プラチナの指輪のような光沢を放って夜空に輝き始めた。
昔、レイクイザベラにあるホットスプリングでキャンプをした時に見たヘール ポップ彗星は肉眼ではっきりと見えるものだった。 その日、海が一望出来るはずの休憩地点では雲海に包まれて私たちは天上人になっていた。 その時に、どこからともなく素朴な笛の音が響いてきた。その曲はホピインディアンの村を訪れた時に聞いたようなネイティブインディアンの民謡のような曲だった。目を凝らすと薄暗くなった木の上の方に背中をもたれて太平洋の海に向かって笛を吹いている人の姿がかすかに見え
た。 しばらく私たちは静かにその音楽の音色に耳を傾けた。 残念ながらパーンスターズ彗星は見えなかったけれど私たちは素敵な野外コンサートに出くわすことが出来た。 そして、その音楽を聞きながら静かに私たちはその場を離れ また同じ来た道を戻った。何だかとてもミステリアスな不思議な夜のひと時だった。
翌週、また私たちは、その同じコースを歩いてみた。また、あの音楽を聞けるかもしれないと期待して…″笛を吹いていた人がいたのは、あの木だったよね? ″そう尋ねる私にリーダーの人もうなずきながらあたりを見回したが人の気配は無かった。 そこにはその人がもたれてかかっていた木が風に吹かれて揺れていて、まるで黄昏時の夢物語のようだった。
茶子 スパイス研究家 |