恒例のクリスマス・ツリー用の樅(もみ)の木を積んだ馬車が11月23日にホワイトハウス(大統領官邸)に到着し、いよいよアメリカも年末ムード入りです。新聞報道によると、今年のホワイトハウスの樅の木はノースカロライナ州で伐採されたもので、品評会で選ばれた木なのだそうです。
そのオバマ大統領は11月24日、2人の娘さんを伴い、近くの書店を訪れ、子供向けの本15冊をまとめ買いし、その様子をテレビが放映していました。
アメリカではサンクス・ギビングデイ(感謝祭)の翌日から年末商戦が始まります。今年は11月23日(金曜日)がそのスタートの日でした。初日はブラック・フライデーとよばれ、全米の小売店の売り上げが1年で最も高いといわれる日です。景気低迷の昨今に鑑み、今年は大手の小売店も感謝祭の翌日ではなく、当日から店をオープンしたところも多かったようです。
また、翌週明けの月曜日(今年は11月26日)はサイバー・マンデーとよばれ、オンライン・ショップの売上げが急増する日といわれています。これは連休明けの月曜日に職場の回線を使ってオンラインの店舗にアクセスして買い物をする人々が多いためであるとも、または感謝祭の休暇中には実店舗での買い物に外出した人々が、家庭に戻ってオンラインで買い物をするからであるともいわれています。
ブラック・フライデーの場合、ここでいう「ブラック」とは、「暗黒の」といったネガティブ・イメージではなく、この日は小売店が軒並み「黒字」を計上できる日という意味の「ブラック」でポジティブな表現なのです。
今年のブラック・フライデー(前日を含む)ではアメリカ全般で、各地の小売店に予想以上の買い物客が殺到したようです。経済の低迷が続く中でも、消費者の動向は悪くなかったようです。全米からのテレビ・ニュース報道を見た限り、画面には店舗になだれ込む大勢の買い物客らで活気に満ちた様子が映し出されていました。
ここ数年は開店時間をブラック・フライデーの午前0時(真夜中)にする店が増えてましたが、小売最大手のウォルマート(Walmart)、ターゲット(Target)などはさらにフライングして前日夜から店を開け、家族だんらん日である感謝祭当日にまで切り込んだようです。昨年を上回る客足に、ウォルマートの責任者は「これまでで最高のブラック・フライデーだ」と話していたのが印象的でした。
一般の予想に反して滑り出しは好調だったブラック・フライデーでした。全米小売連盟が11月25日に発表した調査結果によると、先週木曜日の感謝祭からの4日間の売り上げは過去最高のおよそ590億ドルで、去年より70億ドル増えたそうです。今回最も売れた商品は例年の薄型テレビではなく、衣類だったということです。例年よりセールの開始日を早めるなど顧客の取り込みに各小売店が工夫を凝らしたことが、良好な年末商戦のスタートに効果が出たのではないでしょうか。
売上高が好調である理由のひとつがインターネット・ショッピングの増加です。感謝祭明けのブラック・フライデー一日だけのインターネットでの売り上げは去年より21%増え、過去最高の10億ドルとなり、また次の月曜日(サイバー・マンデー)では、多くのオンライン・ショップが活気づき、売り上げはさらに伸びたようです。
IBMが11月27日発表した感謝祭連休明け(26日)のオンライン販売調査によると、売上高は前年比30.3%増と大幅増になり、過去最高を記録したとのこと、携帯端末を活用した購入が広がり、米年末商戦でのネット市場の拡大が浮き彫りになりました。IBMが米国の小売り500店舗を対象に行った調査によると、今年のサイバーマンデーでは携帯端末による売り上げが前年の約2倍も増加。タブレット端末やスマートフォン(高機能携帯電話)を駆使して掘り出し物を探す消費者が目立ったということです。
ただし楽観材料ばかりではありません。アメリカは経済の低迷、高い失業率など、来年1月20日からスタートする2期目のオバマ政権は多くの難題を抱えています。年明けに迫った「財政の崖(fiscal
cliff)問題」(下記注)などへの不安から明るい前途は考えられず、厳しい新年を迎えることでしょう。
我が家のまわりを見ても、ハロウイーン時の飾りつけは例年にくらべ控え気味の家が多かったように感じました。クリスマスの飾りつけはこれからですが、どうなるか気になるところです。
(注)財政の崖(fiscal
cliff)問題とは:来年明けに減税失効と歳出の自動削減が重なる問題のこと。2000年代に始まったブッシュ大統領時代におこなわれた大型減税策(いわゆる「ブッシュ減税」)が2012年末に期限切れを迎え、同時に2011年にアメリカの債務上限が問題になった際に2013年1月からの強制的な予算削減を決めている。そのため、このままでは2013年から、減税が切れ(実質増税)、強制的な歳出削減というダブルパンチでアメリカが崖から落下するような急激な財政の引き締めが起こってしまう可能性があること。
河合 将介( skawai@earthlink.net ) |