昨年の飛行を最後に現役引退した米国のスペースシャトル「エンデバー号」がロサンゼルスにやってきました。10月30日からロサンゼルスのカリフォルニア・サイエンス・センターで一般公開され、余生を送るためです。「エンデバー号」は先週の金曜日(9月21日)、改造ジャンボ機の背中に載せられ、ケネディ宇宙センター(フロリダ州)からまさに「ラストフライト」を終えたのでした。私たち夫婦も偶然ですが、この「ラストフライト」を目撃しました。
この日(9月21日)の朝、私は昨年受けた癌手術の経過観察のため、ロサンゼルス・ダウンタウンの病院まで妻の運転で出かけました。病院で私は手術担当医から直接、術後の経過について診療をうけ、今回もおかげさまで特に術後の問題はないと告げられ、気をよくして昼少し前に病院を後にしました。
私たちの車がロサンゼルス・ダウンタウンからフリーウエイ#110にはいった頃、前方近くの空に見慣れぬ大きな飛行機が左から右前方へ向かって飛んでいるのを見つけました。なんと全長約37メートル、重さ約75トンの「エンデバー号」を背中に乗せたジャンボ・ジェット機でした。『アッ!、スペースシャトルだ!』助手席で思わず叫ぶ私に、ハンドルを握っていた妻もあわててスピードを少し落とし、上を見上げ、気づいたようでした。いつものように混雑していたフリーウエイでしたが、すべての車がしばらくの間、アクセルを緩めて空を見上げていました。
私は「エンデバー号」がその2日前の19日、ケネディ宇宙センター(フロリダ州)を発ち大陸を横断、カリフォルニア州のエドワード空軍基地に到着していたことはニュースで知っていたのですが、その後のニュースから離れていたので、ロサンゼルスへ着く日やその飛行ルートは知りませんでした。偶然とはいえ、実物が上空を飛ぶ雄姿に遭遇し、一気にテンションがあがる思いでした。
この日の夕方から夜にかけてのローカルテレビ・ニュースの時間では、この「エンデバー号」到着ニュースが当然のようにトップで報じられ、夜8時の「チャンネル9ニュース」は15分以上がこの話題に費やされていました。
このニュース報道によると、この日、「エンデバー号(を背中に搭載したジャンボ機)」はサンフランシスコのゴールデンゲート・ブリッジやシリコンバレーのNASA基地上空などを周回し、多くの市民の歓迎を受けたあと、ロサンゼルスへ向かい、ロサンゼルス周辺でも、戦闘機2機をお供にハリウッド、ディズニーランド、ユニバーサル・スタジオ、サンタモニカ、クインメリー(ロングビーチ)、グリフィスパーク、JPL(Jet
Propulsion Laboratory ――
NASAの研究所)、ロサンゼルス高層ビル街などの上空などを周回し、多くの人々からの歓迎と歓声を受けながら、午後1時ごろ、ロサンゼルス国際空港に無事到着したのだそうです。リトル東京を含むロサンゼルス高層ビル街では正午直前と、さらにそれから約20分後の昼休み時間の2度にわたって低空で通過し、人々の喝采を受けたそうです。空港近くの
高速道路でも一時、通行止めとなり、車を降りて着陸する「エンデバー号」を見守るドライバーらの姿がみられたようです。
そういえば、私たちが昼前に病院の建物を出て付属の駐車場ビルへ向かう途中、道端の看護師さんや病院関係者など多くの人々が一方向の空を見上げて騒いでいるのを見かけましたが、そのとき私は知らずにいたので無視して通り過ぎていましたが、「エンデバー号」が周遊した観光地や住宅地の人々にとって今回の「エンデバー号」到着は生涯二度と見ることの出来ない世紀の航空ショーであり、演出効果も素晴らしかったと思います。
また、ダウンタウンのオフィスビル街はちょうど昼休み時間に重なっており、ビジネス関係者が屋上などから歓声を上げたそうで、これらの人々を集計すると何万どころか、何十万人にも達したのではないでしょうか。「素晴らしい演出」に加え、「粋(いき)な演出」だったともいえるのではないでしょうか。私たち夫婦もそんな航空ショーの目撃者の仲間に加わることが出来、光栄でした。
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スペースシャトル「エンデバー号」は1992年5月に初飛行して以来、昨年(2011年)5月〜6月の最終ミッションまで、計25回のミッションをこなしました。日本人宇宙飛行士では、毛利衛さん(1992年)、若田光一さん(996年)、土井隆雄さん(2008年)の3人が搭乗しました。
なお、米国(NASA)が宇宙との往復に使ったスペースシャトルは5機でした。このうち、「チャレンジャー号(1986年打ち上げ直後に爆発)」と「コロンビア号(2003年大気圏に再突入時、空中分解)」の2機が事故で失われたのは痛恨の限りです。現存する3機のうち「ディスカバリー号」はすでに
バージニア州の博物館で展示されています。「アトランティス号」はケネディ宇宙センターで展示される予定となっています。したがってスペースシャトルの飛行は今回をもって正真正銘、最後となったことになります。
河合 将介( skawai@earthlink.net ) |