ヒーリングガーデン(癒しの庭)
先週の日曜日はイースターサンデーでハイキング仲間の女性からブランチに招待された。イースターとはキリスト教ではイエスの復活を祝うお祭りで生命や復活のシンボルとして卵にペイントしたものを飾って祝うらしい。
″今日は簡単にサラダとパンとベイクドハムぐらいだけどいいかしら?″そう言って彼女は私を庭に案内してくれた。
最初に彼女の庭を見て″ヒーリングガーデン″この言葉が浮かんだ。私の大好きなフリージアがテーブルに飾られていたのはこの庭から生まれたものだった。
一歩足を踏み入れた途端にフリージアはもちろんジャスミンや薔薇の花の匂いが風にのって漂ってきた。その途端もう私は完璧に異次元の世界に入ってしまった。
手前の方の庭はレモンやタンジェリン(オレンジ)アボガドの木がある。
″このオレンジは甘いの?″そう聞く私に手早くオレンジをもぎ取って何も言わず私に差し出した。オレンジをむくとあたり一面オレンジの爽やかな甘い香りに包まれた。オレンジの皮の精油には癒し効果や殺菌効果があるというので私も時々オレンジオイルをアロマディフューザーに入れたりして香りを楽しんでいるが生のオレンジから飛び散る新鮮なオレンジの香りの素晴らしさはどんなオレンジオイルも到底及ばない。
生きている木からもぎたてのオレンジを口に入れた瞬間、甘くて美味しいだけでなく何かエネルギーのようなものを感じた。目には見えないけれど生きている木の先に生っているオレンジをもぎとるその瞬間までそのオレンジは生きていたわけで採り立てのオレンジには、まだこの木と繋がっているオーラのようなものが糸を引いて存在しているような気がした。それが体の中に入るとそのオーラが光を放つようなイメージが浮かんだ。心の中でありがとうとオレンジの幹を撫でてみた。オレンジの美味しさに浸っていたら彼女から呼ばれた。
″こっちに来て!まずは奥の野菜ガーデンから説明するから、これがホウレンソウ、こっちがビーツあれはラディッシュと長ネギ、そっちはレタス″ひとつひとつ抜く前に私に説明しながら、たちまち10種類ぐらいのお野菜が持ってきたボールに一杯になった。そして手前の庭に戻り今度はハーブやスパイスそして食用の花を摘みはじめた。ミント、ローズマリー、タイム、バジル、セージ、セラント、ガーリック、パセリと覚えきれないほどあらゆる野菜やハーブが彼女の庭に元気に育っていた。壁には葡萄もありこれから実をつけるようだ。トマトもキュウリもインゲンもブルーベリーもおおよそのお野菜やフルーツがここにはある。季節ごとにまたその種類も変わっていく。
この野菜ガーデンを作り始めてから殆ど野菜を買わなくなったと彼女は言う。
初めは大変でも長い目で考えればだいぶ節約になるし健康にもいいのと力説してくれた。
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彼女が数日前に店で買ったホウレンソウを料理しようと冷蔵庫から出したらたった数日で悪くなっていたので捨ててしまったと不愉快そうに言った。
だから食べる度にその都度野菜ガーデンからピックするのに限ると…
そんな生活が出来たらどんなにいいだろう。こんな食生活が本当の贅沢なのだろうと思う。また山での憧れの生活がふと頭に浮かんでしまった。
しゃべりながら彼女は手も動く。今度はボールに摘みたてのお野菜を庭の洗い場で洗って根元を手でちぎりながらコンポース用の野菜とサラダ用の野菜とに分けて行く。頭の回転が速い彼女はあれこれ口早に喋りながら手も動くし気配りもすごい。テキパキチャキチャキこんなイメージなのだ。私のようにボーっとしている事が一時も無いのだ。
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月曜日から金曜日までフルタイムで仕事をしながら良くこれだけの庭の手入れと家事とハイキングとプラス2匹飼っている犬の世話をする時間があるものだと感心する。
彼女の庭は手前の花やハーブガーデンと奥の野菜ガーデンそして裏庭にはハイキングのトレイルに続く道が繋がっている。裏の庭は段々畑になっていて石榴の木、びわの木、桃の木、リンゴの木とあらゆる果物の木がある。夏にはスイカもあると言う。あれこれ沢山ありすぎて彼女に説明されても全部は覚えられない。その裏庭にはコンポースの容器も置かれてあった。
数週間前に亡くなったという、老犬の為に作られたテーブルとイスも裏庭のメディテーションプレイスのようだった。年をとってからは散歩も遠くまで歩けなくなり、もっぱら裏庭のみの散歩で彼女と一緒にその場所でくつろいでいたらしい。
ポーランドから来た彼女のお母さんは医者で忙しい人生を送ってきたので一度も台所に立つことはなかったと話してくれた。彼女が料理を覚えたのは息子さんのガールフレンドから学んだというから初めから料理のセンスを持ち合わせていたのだと思う。庭作りも全て本で読んで失敗を重ねながら自分なりに勉強してここまで来たという。何事にも熱心で研究するタイプなのだ。またまたそんな彼女を尊敬してしまう。
庭先でお野菜を洗い終わると台所に戻りサラダの下ごしらえ、ドレッシングもオリジナル、今回はゴマ油と庭からとれたレモンと隠し味にブラウンシュガーとチリペパーに岩塩たったこれだけなのに美味しいドレッシングが出来上がった。
パンは毎週、いろんな種類のパンを焼くのでパンもめったに買わないそうだ。ベイクドハムはタイムやローズマリーを刻んだものを具財に混ぜてハムをいためた鉄のフライパンごとオーブンに入れて焼き上げた。
その合間に犬のランチもさっさと作り始めた。ただの餌ではない。ちゃんとしたりっぱな食事なのだ。
鶏肉を蒸した白身の肉にハムのような肉、ハンバーグのようなもの、ナッツそして犬のビタミン剤やらフラックスシード(これは体にいいという事で人間もオートミールや料理に普通に使っている)おそらく10種類は入れたかもしれない。まさに豪華なバランスミールだ。
2匹いるうちの若い方の犬はまだ6ヶ月のベイビーだというがとてもベイビーには見えない大きさだ。人が来ると嬉しくてジャンプして飛びつく。嬉しすぎてハイパーになってしまうのだ。あまりうるさいので一時、彼女は犬を部屋の鉄カゴにしばらく入れて落ち着くのを待った。このハイパー犬の名前はタンジェリンのタンジー、タンジーの好物はアボガトで落ちたアボガドをこの時も美味しそうに食べていた。苺も好きでご主人様が食べる前に全部食べられてしまってからは柵を作ったそうだ。何でも食べるのでまるで掃除機のような犬なのよと彼女はタンジーの頭を撫でながら言った。彼女にとって犬はなくてはならない存在でこよなく犬を愛している。犬の同好会にも所属していて定期的にミーティングも出ていると言っていた。だからいつも忙しい。
それにしても彼女の家のイースターサンデーは素晴らしいブランチだった。″こんなに美味しいフレッシュな摘みたてのサラダや焼きたてのパンが毎回食べられて、ご主人のジャックさんは幸せね。″と言うと″もちろん幸せだけど、あれをやれ、これをやれ、と指示されるから彼女が家にいる時は休まる時がないよ″と苦笑いしていた。
ご主人はもう仕事を退職してゆっくりスローライフを楽しんでいる。景色が良く見えるようにコーナーに設置された食卓テーブルからは180度眺めのいい山が見渡せる。
いつか私も彼女のようにハーブやスパイスや花に囲まれた生活をしてみたいと思った。そして庭には釜戸を作りパンを焼き、湧き水からくみ上げた美味しい水で料理する…憧れの生活だ。
今は無理だから当分はファーマーズマーケットのお野菜で我慢しよう…でも諦めないでその夢を思い続けよう、そう思った。願いは強く思い努力して行動すれば叶うという事を信じて…
茶子 スパイス研究家 |