龍翁余話(208)「異宗教合同感謝祭」
ハワイ・オアフ島へ旅行すると、団体ツアーなら必ず と言っていいほど連れて行かれる観光スポットが『ヌアヌ・パリ』。ハワイ語で『ヌアヌ』は『涼しい高台』、『パリ』は『崖』の意味。ホノルル・ダウンタウンから北東へ、カネオヘやカイルア方面に向かうパリ・ハイウエイを走ると、切り立った絶壁の山脈(コオラウ山脈=写真)が眼前に迫る。約25分走るとパリ・トンネル、その手前の右側に登り口。『ヌアヌ・パリ展望台』は標高300m、雄大なコオラウ山脈の切れ目に位置し強風の通り道、時には冷たいシャワーに見舞われ“涼しい高台”どころか、寒い。翁がよく行くゴルフ場(パリ・ゴルフコース)、カネオヘの街、カネオヘ湾が眼下に広がり、確かに絶景。カメハメハ大王がオアフ軍と戦った最後の激戦地“ヌアヌの戦い”(1795年)、これに勝利してカメハメハ大王はハワイ全島を征服、そんな深い歴史が刻まれている場所でもある。
さて、今号のテーマは『ヌアヌ・パリ』ではなく、翁が滞在中の11月22日の夜に開催された『2011異宗教合同感謝祭(第50回)』が主題。その会場となったのが『ホノルル・コミュニティ教会』(写真右)。そこは、ワイキキから車で15分(『ヌアヌ・パリ』に行く)パリ・ハイウエイに乗って直ぐの分かれ道“ヌアヌ・アヴェニュー”にある。1934年の設立だからハワイにしてはそれほど古くはないが何故か多くの日本人カップルが挙式したい上位候補の教会。広大な緑のガーデンもいいが、ハワイのシンボル「ダイヤモンドヘッド」(写真左)をモチーフにした佇まいが印象的。
『異宗教合同感謝祭』とは、ヌアヌ地域に所在する異なる宗教団体が一緒になって神仏に感謝の意を捧げる祭りである。プログラムによると、ホノルル最初のイエス・キリスト教会やユニテリアン派の教会、ハリス統一メソジスト教会、ローマカトリック教会など、仏教では本派本願寺ハワイ別院・・・実は翁、この別院の代々のビショップ(司教)とはゴルフ友だち。また、この寺院に組織されているコーラス・グループ『本派本願寺ハワイ別院クアイア(聖歌隊)』のメンバーも皆知り合いだ。中には、ずっと昔からの龍翁ファミリーもいる。昨年もそうだったが、今年もまた彼らのお誘いで参加した。祭(式典)は聖歌隊(写真下:左)が英語と日本語で歌う『コスモスの花』で厳かに始まる。ご承知の通り“コスモスの花言葉”は“純真・真心”。各宗派に所属する若者たちが次々と、神仏へ感謝のメッセージを述べる。無宗教で、英語もよく理解出来ない翁だが、この荘厳な雰囲気の中で熱くメッセージを読み上げる若者たちの純真な姿に胸を打たれる。
 |
 |
突然、大きな拍手が沸いた。プログラムにも紹介されていたが、特別ゲストスピーカー・オバマ米国大統領の異父妹・マヤ・カッサンドラ・ストロさん(写真右)の登場である。
マヤさんはニューヨークのバーナード大学を卒業後、ニューヨーク大学で言語学の学士号、ハワイ大学で国際比較教育学の学士号を取得、現在はハワイの名門女子校のラ・ピエトラ・ハワイスクールの歴史教師、ハワイ大学でも教鞭をとっている、とのこと。
この人の話を聞き逃してはもったいないと思い、予め日本語の出来る友人に通訳を頼んでおいた。オバマ大統領の演説の上手さは定評があるが、マヤさんも上手い。流れるようなリズムと音楽的なイントネーション(抑揚)が心地いい。義兄バラク・オバマの大統領選挙運動の時、マヤさんのこの魅力的なスピーチがハワイの多くの有権者の心を捉えた、というのも頷ける。英語力の乏しい翁でさえ、まるで全部が理解出来ているかような錯覚を覚えるほど魅せられた。特にインド独立の父ガンジーの非暴力主義を倣ったアフリカ系米国人(黒人)の公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング・Jrの話のあたりで翁は身を乗り出した。何故なら翁、これまで4回、アトランタにある『キング牧師の生家』や『キング・ビジターズ・センター(記念館)』を訪ねたし、キング牧師夫人のコレッタさんにもお会いした(コレッタさんはキング牧師亡き後、彼の遺志を継いで非暴力・人種差別撤廃・黒人社会の地位向上などの運動を指導した。2006年死去、享年78)。そんな思い出が蘇ったからだ。
更に通訳の友人の説明で「いかなる宗教にも“愛”と“赦す心“が詠われている」という話もあったとのこと。これも一段と嬉しい。何故なら翁の座右の銘の1つに『恕』(じょ)がある。『恕』とは孔子の言葉で、赦す、思いやる、人間としての尊厳を尊ぶなどの意味が込められている。翁、この感謝祭に誘ってくれた聖歌隊のメンバーやファミリーたちに大いに感謝、そして思った――このような『異宗教合同感謝祭』が世界各地で行なわれたら、戦争は絶対に起きないであろうに・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |