龍翁余話(181)「あしかがフラワーパーク」
GW中は家に籠っていた翁、連休あけの5月9日、栃木県足利市に行った。3回目の訪問だ。最初は30数年も前のこと、論語(孔子)を学びたくて史跡・足利学校(鎌倉時代に創設された日本最古の最高学府)を訪ねた。同校編纂の小冊子『論語抄』は今でも翁の“導き本”として大切にしている。その時、足利将軍家の菩提寺・鑁阿寺(ばんなじ)にも参詣した。本堂、多宝塔、鐘楼、一切経堂など国指定重要文化財も見事だが、1336年に室町幕府を興した足利尊氏から第15代将軍義昭が1573年に織田信長に追放されるまでの237年間に及ぶ“足利一族の栄枯盛衰の歴史”をこの寺で学んだことが思い出される。
2度目は7年前に栗田美術館見学。この美術館は、同市出身の政治家 で伊万里焼研究家(蒐集家)だった黒田英男(1912年〜1996年)が数百億円の私財を投じて1975年に設立した伊万里陶器専門(1万点所蔵)の美術館である。翁は伊万里焼について特別に深い知識や興味を持っていた訳ではないが、翁の(今は亡き)兄が伊万里焼(有田焼)に関するかなりの造詣の持ち主だった。いつだったか兄夫婦と佐賀県有田市へドライブした時のこと、兄と親交のあった窯元(作家)が特別に2セットの“兄弟雀”を製作してくれた。その1組が(今や兄の形見として)現在、我が家の飾り棚に(兄の遺影と一緒に)飾ってある。そんな理由で栗田美術館行きは“兄を偲ぶドライブ”でもあった。有田焼と伊万里焼は同義語で17世紀初頭、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、武将たちが多くの陶工を連れ帰り、肥前(有田)焼を興したこと、江戸時代、製品が伊万里港から積み出されたので伊万里焼とも呼ばれるようになったということなど、兄の教えを再学習する機会でもあった。
そして3度目の今回は足利学校や栗田美術館に近い『あしかがフラワーパーク』。連休中、家でブラブラしていたので心身がなまって“どこかドライブにでも”と思っていた矢先、タイミングよく友人のH君(かつての翁の同業、足利市隣接の桐生市在住)のお誘いだ。関越自動車道の高崎ジャンクションから北関東自動車道で足利インターへ。H君の「そこからフラワーパークまで約15分」の言葉通り(連休あけのせいか)車もスイスイ。途中“足利学校”や“黒田美術館”の看板が目に飛び込んで懐かしい。ところが“この先800メートル”の看板辺りから突然、大渋滞にはまった。連休あけだというのに6000台の大駐車場が満杯になるほどの入園者数だろう。“この先800メートル”から30分もかかって、ようやく“田んぼ駐車場”へ辿り着く。H君がチケット(1200円)を買って入園口で翁を待ってくれていた。
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樹齢145年の大藤と八重黒龍藤(いずれも県指定天然記念物) |
80mの白藤の回廊 |
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水上の囲いツツジ |
迫間藤と(5,000本の)久留米ツツジの競演 |
東京ドーム約7個分(92,000平方メートル)の広大な園内に、圧巻の大藤と八重黒龍の藤(いずれも樹齢145年以上、600畳の広さ、栃木県指定天然記念物)、80メートル続く神秘的な白藤の回廊のほか、黄色藤、薄紅藤などが4月、5月の2ヶ月間“魅惑の藤花物語”を展開する。加えてその主役たちに勝るとも劣らない彩り鮮やかな久留米ツツジ(5,000本)の競演も見もの。ここで気の利いた感動形容詞を並べてパンフレットの片棒を担ぐのは簡単だが、薄っぺらな印象記になりそうなので、読者には上の写真をご覧いただき、各位のご自由なご感想にお任せすることにしよう。水上の囲いツツジの脇のウッドハウスでH君が用意してくれた幕の内弁当に舌鼓を打ちながら、H君に、翁の亡き兄との思い出話(久留米森林ツツジ公園の話)を押し付けた。
九州自動車道の久留米インターから20分くらいの所に高良山(こうらさん=312m)の登山口があり、そこから大分県日田市方面に通じる耳納(みのう)スカイラインが始まる。左手に穀倉の筑後平野と九州最大の1級河川・筑後川を見下ろす絶好のドライブコース。久留米森林ツツジ公園はスカイラインに入って直ぐ、高良山の北斜面にあり、100種6万株のツツジが植栽されている。翁が帰省の時は、兄が必ず福岡空港まで車で迎えに来てくれて、ツツジの時期は(何回か)この耳納スカイラインを走った、その思い出が今『あしかがフラワーパーク』の久留米ツツジによって鮮明に蘇る。「その久留米ツツジが、どうして足利へ?」とH君の素朴な質問。「うろ覚えだが江戸時代19世紀の半ば、久留米藩士が開発した久留米ツツジが京都や江戸、関東へと運ばれたそうだ」翁の知ったかぶり講釈に彼頷きながら「それにしても、今日は奇しくも、足利でお兄さんにお逢い出来ましたね」H君のこの思いやり言葉に一瞬、翁の胸が熱くなる。そこでH君の友情に感謝を込めて即席一句、“友と来て ツツジの海に 兄偲ぶ”・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |