龍翁余話(158)「タロイモ」
実は翁、とんでもない“間違い”をしでかした。2週間のハワイ旅行から帰国して直ぐの(先週号の)『余話』(157)「フラ」の冒頭に、“カメハメハ大王(1世=1758年〜1819年)はハワイ諸島(7つの主島=ハワイ島・マウイ島・カホオラウエ島・モロカイ島・オアフ島・カウアイ島・ニイハウ島)を統一・・・”と書いた。すでにお気づきの読者も多いと思うが、ハワイの主島は8つ、ラナイ島を抜かしていた。ハワイ出発の前日(11月14日)に配信した『余話』(156)「思い違い・・・」を筆者自ら(早々に)やってしまった。ヒドイ時差ボケも理由にならない初歩的なミスであり赤面の極み。今号の書き始めにあたり、心よりお詫びして訂正させていただく。
さて――15日間のハワイ・オアフ島滞在のうち、3日間マウイ島で過ごした。その時、親友・Hさんのお誘いでタロイモ畑を取材した。マウイ島の東側にある標高3055メートルのハレアカラ山(ハレアカラ国立公園)の麓・クラ地区にHさんのお宅がある。翁がマウイへ旅行する時は、いつもHさん宅に泊めていただく。取材対象のタロイモ畑は、クラから少し北に下ったワイカプ地区の『ノホアナ農園』。翁、タロ
イモ畑を見るのは初めてだが、何故か“懐かしさ”を感じる雰囲気だ。ちょっと見た目には蓮の池(レンコン畑)に似ているから、かもしれない。オーナーのビクターさん(写真上)の話によると「平野の傾斜地に土を盛ったり石組みをして水田を作り、山の峰々から流れ出る清水を川から灌漑用水として引き込み、上の水田から下の水田へと流して最後には、また川へ戻す。タロイモ水田の養分を含んだ水は、川魚を潤す。エコシステムとも言える水の活用法」とのこと。今がタロイモの収穫期。息子のホクアオ君が自分の顔より大きい採り立てのタロイモを見せてくれた(写真右)。タロイモは収穫後、根(イモ)の部分を切り落として、残った茎をそのまま水田に戻すと再びタロイモが育つ。いわば、同じ茎から半永久的に再生を繰り返すわけだから「古代ハワイからの命が途絶えることなく生き続けている」とビクターさんは言う。ハワイでは、タロイモのことを“カロ”と発音する。カロを叩いて磨り潰し、ペースト状にしたものを“ポイ”と言い、ハワイアン・フードには欠かせない。大きなイモを洗って皮を剥き、内側から少し窪んだ木の板の上で、石の道具(クイアイ)で叩いて水を加えつつ柔らかくする(ポイの出来上がり)。それを(ウメケと呼ばれる)木の器に入れて2、3日おく。かなり粘り気があり、昔の人は人差し指と中指ですくって食べたそうだが、今はスプーンを使う。ホクアオ君に勧められて一匙口に入れたが、何とも、どうも・・・
翁が初めてタロイモを食べたのは、20数年前、南米パラグアイのラ・コルメナで日系人の農場を取材した折り、農場主のミツイさん夫妻にご馳走になったのがポリポリ(チキン・スープにトウモロコシの団子を浮かせたすいとん料理)や豪快な牛肉のバーベキュー(アサード)などポピュラーなパラグアイ料理、その時の主食がタロイモ(たしか、ふかしイモのようなものだった、と記憶するが)、塩や醤油をかけたりして食べた。まるで、日本のサトイモのようだった。それもそのはず、タロイモはサトイモ科である。日本各地で栽培されているサトイモやエビイモ、京料理のカラノイモ、タケノコイモ、沖縄地方のタイモ(田芋)もタロイモの一種。タロイモは水田ばかりではなく畑でも栽培されるものもあり、その種類は数10種に及ぶそうだ。
「タロイモ」を書くにあたり、東京都内にどんなタロイモ料理店があるだろうかと、インターネットで調べ、掲載されている店(新橋、有楽町、五反田など)にわざわざ足を運んだのだが全て空振り。よくよく考えたら、そのまま食べられる代物(しろもの)ではないから、よほど手を加えないと商売にはならない。本当は、(煮物、田楽、和え物、汁物、コロッケなど)手を加えた“タロイモ料理”を食べたかったのだが、そんな料理店は探せなかった。その代わり、タロイモを使ったデザートには、いろんな種類があることが分かった。例えば(キウイ味、ココナツ味、バナナ味の)味付きひとくちポイ、タロイモ・チップス、タロイモ・パン、ポイ・チーズケーキ、タロイモ・アイスクリームなど・・・
翁、タロイモの“学習”をするまでは、タロイモとは熱帯アジア、オセアニア、アフリカ、南米など熱帯雨林地帯が主産地と思い込んでいたが、実は、日本でも千葉・埼玉・栃木・宮崎・鹿児島などで年間約22万トン生産しており、スーパーなどで簡単に買えるそうだ。
したがってタロイモは、日本人にとってもけっして縁遠い食べ物ではない、ということを知った。
更にタロイモ学習の中で、ハワイ王国(王家)に代々伝えられてきた創世神話『クムリポ』を学んだ。『クムリポ』には3つの言い伝えがある。1つは真っ暗な世界を蘇生させること、2つはアイカプ(掟=ルール)を作ること、3つは大地を守ること。今、日本の政治は真っ暗闇、やや強引なこじつけだが政治家諸君、日本を明るい(希望に満ちる)大地に蘇らせるために、いかなる“アイカプ”を樹立させるべきか、そして、いかにして大地(国家)を守るべきかを『クムリポ』で学ぼうではないか・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |