継続は力なり(若尾さん帰国)』
企業の終身雇用制度が崩壊しつつある現状に加え、昨今の厳しい経済・雇用環境のもとでは、一つの企業に長期間勤務を約束されることは難しくなっています。私が社会人になった四十数年前の日本は、戦後の高度成長期の中にあり、終身雇用や年功序列が当然でした。非正規社員とか細切れ雇用などというものとは縁のない時代でした。たとえワーキング・プア(働く貧困層)であっても諸外国に比べ格差の少ない社会国家といわれた日本であり、意欲さえあれば誰でも終身雇用された時代でした。
そんな時に社会人になった私にとって、一つの会社に一生を託し、それを全うすることが出来たことは、ふり返って貴重な宝となっています。その間、営々と積み重ねてきた人脈、経験、ノウハウが今も力となって役に立っているからです。なみ外れた特殊な才能に恵まれた一部の人間は例外でしょうが、私のような凡人にとって、力をたくわえ発揮出来るのは愚直なまでに一つのことを永く続けることが最善の方法のようです。安易な近道はなさそうです。まさに「継続が力」になるのだと経験が実感させてくれます。
平凡なことでも継続させることにより予想外の実がみのり、結果を生み出すのはビジネスばかりではありません。趣味やボランティアでもおなじです。
この「雑貨屋ウイークリー」も店主大西良衛さんの並外れた精神力と実行力で一度の休刊もなく13年間も継続して現在に至っています。発刊当初は「たかがメルマガ」だったものが連続して674回も発行されれば反響も含めて対外的な影響力まで発揮しています。私の「L.A.観光スポット案内」も含め、これまでに受信した問い合わせや反応も多数あり、その殆どが私とは面識のない人々からのものでした。
このたび、私たちの仲間である若尾龍彦さんが長い滞米生活を終え、日本へ帰国されることになりました。若尾さん今年のはじめまで二年間にわたり、南カリフォルニア日本商工会議所会頭の重責を全うされ米国の日系社会の発展のみならず、米国内の他コミュニティとの関係強化のために貢献されました。
その若尾さんが1987年から22年間続けてきた私的勉強会「JACAL」も今月(4月)の定例会をもって最終回を迎えることになりました。この勉強会は「今の世の中が変わったらどのような社会が出現するか?それを日米の比較から考えよう」というコンセプトで始められ、私はほぼ最初から参加させてもらってきました。
これまで二百数十回も続いた会では政治経済、文化や芸術、宗教など多岐にわたるテーマについて活発な論議の場を繰り広げました。毎年初にはその年の年間予測をし合い時代の変化の速さを実感させられたりしました。これらの議論は参加したメンバーの自己研鑽に役立ち、また日米社会へ発信されてきました。これも二十年以上にわたって続けてきた会であったからこその力だと思っています。
私たち、ひとりひとりの人間にとって「継続」の究極は「長寿の達成」に尽きるといえましょう。無事に古希を超えることが出来た私ですが、これまで生きることが出来た感謝の念を抱きつつも、まだまだはるかに長寿の諸先輩に較べれば若輩者である自分です。人生のさらなる継続をめざし、「継続は力なり」をわが身で実践すべく、自らに鞭打ち、さらに一層燃えあがるよう努力しよう。 河合将介(skawai@earthlink.net) |