1年近く、お祭り騒ぎにも似た賑やかさで全米を駆け巡ったアメリカ大統領選挙戦も本選挙が数日後に迫りました。今回の大統領選挙はその結果がどのようであれ、後世まで残る歴史的な選挙として記憶されることは間違いないでしょう。
かつてエリート支配層の象徴とされた『ワスプ』 (White Anglo-Saxon Protestant
=アングロサクソン系の白人でプロテスタント教徒の男性。アメリカ社会の主流をなした初期移民の子孫たちとされる)という言葉は、表面的にはその色が薄くなっているようです。最も“表面的”という言葉の裏には“立て前として”という見えざる影が付きまとっている感がなきにしもありません。
今回の大統領選挙が一方(民主党)では人種問題という難問を抱え、そして他方(共和党)では当選すれば就任時の年齢が過去最高齢の大統領と初の女性副大統領の誕生という、異例ずくめの選挙ということになります。
本来、国家の最高指導者は政策や実行力、リーダーシップなどの資質が問われるべきであり、人種や年齢、性別など問題でない筈ですが、現実はそうはゆかないのはどこの国も同じです。
特にアメリカでは「黒人vs
白人」の選挙の場合、これまでの経験上、事前の世論調査では黒人候補の支持率が実際より高めに出る、との研究結果があります。この現象を「ブラッドリー効果(Bradley
Effect)」といわれています。
「ブラッドリー効果」とは、1982年、カリフォルニア州知事選挙に立候補した黒人のトム・ブラッドリー氏(ロサンゼルス市長、民主党)が、事前の世論調査では圧倒的有利な状態にあり、ほとんどのメディアはブラッドリー氏の勝利を予想したにもかかわらず、対立候補であった白人のデュークメジアン氏(共和党)に敗れたのです。
人種差別主義者と思われるのを嫌った一部の白人が、選挙前の世論調査ではブラッドリー候補を支持すると答えながら、現実の投票では白人候補者であるデュークメジアン氏に票を投じた結果とされています。このように白人有権者が黒人候補者に投票するといいながら、本音と建前を使い分け、実際は白人候補者に票を投じる投票行動を政治学者は「ブラッドリー効果」と名づけています。今回の投票行動でははたしてこの「ブラッドリー効果」が現れるのかどうか、有権者の意識を占う意味でもその結果に注目です。
もっとも今回のバラク・オバマ氏はこれまでの黒人候補者とは完全に異なり、彼の発想はあくまでアメリカ合衆国の代表としての大統領候補であることは明白であるだけに、少なくとも人種問題が選挙結果に少しでも左右されることのないよう、≪本音ベースで≫期待したく私は思っています。
ところで、今回の大統領選挙(正確には大統領候補者に票を投じる選挙人を選出する「一般投票」)の投票日は11月4日(火)です。この投票日は4年ごと、11月の第1月曜日の翌日の火曜日(11月2日から11月8日)に行われることに決まっています。
この日程がどのような経緯で決まったのかは諸説があるようですが、一般には、もともと農業国であったアメリカでは11月始めが最も農閑期であったこと。また、火曜日としたのは、当時の有権者にとって投票所までの道のりが遠く、安息日の日曜日を避けて月曜日に出発しても火曜日には投票所にたどり着くが出来るから、ということのようです。
投票日を単純に「11月の第1火曜日」とせず、「第1月曜日の翌日の火曜日」としていることに興味がわきます。ですから、選挙の年によっては(11月の第1日が火曜日から始まる場合)投票日は第2火曜日になってしまいます。そんな年に間違って11月1日(第1火曜日)に遠路はるばる駅馬車で投票所へやってきたなどという迂闊(うかつ)者はいなかったか余計な心配をしてしまいます。
実は、先日、私は恥ずかしながら似たような間違いを犯しました。私が参加しているいくつかの月例勉強会の一つ(JACAL)は毎月第2火曜日に開催され、もう一つ(S.B.M.S.)は毎月第2水曜日と決まっています。
そこで私はJACAL(第2火曜日)の翌日(通常第2水曜日)がS.B.M.S.と思い込んでいました。
先々月(10月)もJACAL(第2火曜日、10月14日)の翌日にS.B.M.S.に出席すべく会場であるホテルのミーティング・ルームへ行ってみたら、誰一人も来ていないのです。不思議に思ってホテルのフロント係りの彼女に聞いてみたら、『ソノMeetingハLast
Weekネ!!』 ――― フロント係りの若いオネエサンは、思い切り“笑い”をこらえた様相で私の顔を見つめていました。
私はこの日(第3水曜日)を第二水曜日と感違いしていたことに、その時初めて気付いた始末でした。――― あゝ、我が家からこのホテルまで近い距離でよかった!駅馬車に乗って2日をかけて来る距離だったらどうなっただろう? ――― 私の老ボケも遂に来るところまで来てしまい、極まったようです。 河合将介(skawai@earthlink.net) |