――― 前号より続く ―――
私たちの詩吟大会の会場はサリナス市内の仏教会ホールでしたが、大きな鐘楼まで備えた立派な寺院の広いホールでした。
私たちの流派の詩吟会は大きく北加(北部、中部カリフォルニア)と南加(南カリフォルニア)に分かれ、会が主催する吟詠・吟舞大会は春(北加)と秋(南加)の二回開催されることになっています。今年の春季大会は北加のうち、サリナス支部とマンテンビュー支部が担当ということで、サリナスで開催されました。
私たち南加地区のメンバーが会場に到着したのは午前10時過ぎでしたが、会場は午前11時からのスタートに備えて各地からのメンバーは殆ど到着しており、開会の準備も完了していました。百名近い盛大な吟詠大会でした。
この日のために会場の手配、舞台組み立て、机・椅子の配置、音響機器や会場内外の飾り付けなどなど、担当支部の皆さん完璧な準備に感銘しました。また、婦人部の皆さんは手づくりの軽食、おつまみ、飲みものまで用意してくれ、私たちは5時間余りのバス・ドライブの疲れも吹き飛ぶほどでした。
サリナス支部メンバーのT氏ご夫妻はこの地でナーセリー(花卉園)を見事に成功させた方で、“カーネーション・キング”とまで呼ばれている人です。数年前、この地を訪問された日本の宮様も立ち寄られ、また航空会社の機内誌にもこの花卉園は取り上げられたそうです。
日本を遥かに離れたこの地で、ここまで事業を成功させるためには私たちの計り知れない苦労があったことでしょうが、そんな苦労を感じさせない温厚な顔のご夫妻で、帰りに私たち全員に新鮮な花束までいただきました。また他のメンバーの方々からも新鮮な野菜や、漬物などの土産を用意いただき、その心遣いには私たち一同感激しました。
春季吟詠・吟舞大会は参加者全員が普段から励んできた吟道の成果を発表する場であり、吟者・舞者の皆さんは日頃の練習の成果を思う存分発揮しました。
入門まだ9年の不肖私も下手は下手なりきに声を張り上げ吟じさせてもらいました。今回の私の吟題と詩は次の通りでした。
☆荒城の月(杉田 国峯作)
栄枯 盛衰は 一場の夢 歳月 流水 去って還らず (歌)春高楼の 花の宴 めぐる盃 影さして 千代の松が枝 わけ出でし 昔の光 今いずこ 今夜 荒城 月夜の曲 哀愁 切々として当年を憶う
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詩吟は日本の伝統文化そのものですが、サリナスという街は詩吟の似合うところでした。私たちを受け入れてくれた人たちの日本的な温かい心がそう思わせてくれたのかも知れません。
今回はチャーター・バスでのたった一日の日帰り旅行でしたが、サリナスはたいへん魅力的なところでしたので、いつかまたゆっくり訪れようと思っています。
「サリナス去り難し」が今回の感想でした。夕方5時過ぎに私たちのチャーター・バスはサリナスを後にロサンゼルスへ向かい帰路につきました。いつの日かもう一度ゆっくりこの街を訪れてみたいものです。
河合将介( skawai@earthlink.net )
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