当雑貨屋ウイークリーでもお馴染みだった「目(さっか)昭子さん」が長年のロサンゼルス生活を卒業され、ご夫妻で日本(ご夫妻の故郷山口県)へ帰国されることになりました。
私の記録が間違いでなければ、さっかさんは当雑貨屋ウイークリーにはNo.231(2000年10月16日号)に『あっこのおいしいロサンゼルス――レストラン案内』として登場し、はじめの頃は隔週号に、そしてすぐ毎号ほとんど休むことなく、No.376(2003年7月27日号)までの2年9ヶ月間『あっこのおいしいロサンゼルス』シリーズを書き続けてくださいました。
同シリーズではこれまで彼女が取材し、当地日系新聞(羅府新報)ほかのメディアに掲載してきた「ロサンゼルスと周辺のレストラン案内」を中心に、折に触れ心に感じたさっかさん独特の感性あふれたエッセイ「満腹したら食休み」シリーズなど寄稿され、私は毎号楽しみに拝読させていただいていました。さっかさん、日本へ戻られて、落ち着いたらまた雑貨屋へ寄稿者として戻ってきてください。
さっかさんの「レストラン案内」は和・中・洋ほか多彩なレストランの紹介で、私は友人、知人と外食をする時、先ずは参照する必須のバイブルでした。バイブルになるほどの素晴らしい取材記事はどのようにして作られているのだろう。 ――― さっかさんの場合、香港駐在時代からの(もしかしたらもっと前からの)食に対する飽くなき興味のなせる結果であろうことは理解できますが、外食には結構時間と費用がかかるでしょうし、好きな料理だけ注文するわけにはゆかず、数多くのメニューを試す必要もあるでしょう。
あるとき、彼女にこのへんの疑問を問うたことがあります。彼女は一つのレストランを取材する場合、原則として対象店へ二回通うそうです。第一回目は普通に客として食事をし、取材対象とすると決めたらそのレストランのオーナーに取材を申し出、改めてもう一回その店に行って話を聞き、そして写真を撮らせてもらうようです。
この場合一人でお目当てのレストランに出かけても食せるメニューの数は知れています。ある時は彼女のご主人に同行してもらい、またある時は友人たちにも声をかけて一緒に行ってもらい、取材を手伝ってもらうのだそうです。「私のために時間と費用ほか迷惑をかけているんです」と彼女は笑っていました。
さっかさんご自身も「満腹した食休み(8)」(Zakkaya Weekly No.263)で次のように書いています。
(前略)私の場合は、まず行って普通に「食べる」、そして会計を済ませた後「取材の申し込み」、日を改めて「取材」。食事は大抵の場合夜の忙しい時間に行くことから、ゆっくり話を聞こうと思えばまた後日ということになります。もちろん丁寧な取材をしたいからという言えば聞こえは言いのですが、本音を言えば、私の英語力では「その場でサッサッと取材して…」なんてカッコイイ芸当はとても出来ません。取材をする事を前提にレストランへ足を運びドアを開ける瞬間、とても緊張します。「ああ、ここがどうかおいしくて気持ちの良い店であります様に」と。私の取材基準は「おいしい」「気持ちの良いサービスと清潔感」「全ての内容と料金とのバランス」。当然誰が行ってもお金を払うからには要求することばかりです。(中略)格は違っても「良い店」の共通点は「お客さんに喜んで貰いたい」という姿勢を必ず持っていることです。客は同じ人でもその日によって求めるものが違います。
カジュアルな食事を求めたり、おしゃれして気取った雰囲気を求めたり。要は客が求めるものと、店の格が一致していれば良いのです。でも共通する事は「満足」です。満足した時それにふさわしい料金を払うのです。客自身もその店の格を作っていくのです。 |
私(河合)もこの雑貨屋ウイークリーに「観光スポット紹介」を連載しています。実際に現地を訪ね、取材し、写真を撮らねばなりませんが、幸い私はビジネスから引退した身であり、時間はなんとかひねりだすことも出来るし、取材コストはガソリン代と施設の入場料くらいのもので何とかなります。
それにわが夫婦ともにドライブは大好きだし、取材を口実に年老いた夫婦が子供の遊園地でもどこへでも行くことが出来るので楽しんで取材し、案内を書いています。
でも、さっかさんの場合はご自分で仕事もこなしながらの取材(食事は人間にとって最高の楽しみであり、ゆとり、癒しの時間です。この貴重なひとときさえ取材という目で過ごすのはたいへんです)はたいへんだったことでしょう。
――― 以下、次号に続く ―――
河合将介( skawai@earthlink.net )
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