1997年12月に発行された雑貨屋136号では「クリスマス徒然物語」を、1998年11月から12月にかけて発行された雑貨屋185,186,187,そして188号では、「待つがクリスマス」と題し、良きクリスマスについて呟いた。それらを執筆した当時は米国在住だったこともあり、アメリカの意味深いクリスマス文化や慣習と同時に、その時期、自分がどこに居ても大切にする想いをつづった。あれから9年足らずが経ち、日本在住6年目となった今の私には、あの時代や文化が懐かしく、また恋しくもある。そのひとつに、どうしても、ここ日本のクリスマス時期に苦痛を覚え、怒りさえ感じるものがあるから。そういう訳で今回は、怒りの呟きといこうか・・・
毎週出張で利用する名古屋駅は、いつ行っても人の山。その数、東京駅が寂しく感じるほどだ。先日はその何倍もの人だかり、何事かと周りに訊ねると、なんとクリスマスイルミネーションをひと目見ようと出かけて来た人たちだという。なんと、それは11月第二週目、未だサンクスギビング(感謝祭)さえ終わっていないのに、だ。日本に感謝祭を祝う習慣がないとはいえ、11月初旬にイルミネーション点火は早すぎる。これが名古屋の経済効果を高めるクリスマス商戦だと言ってしまえばおしまいだが、それでいいのかと問いたくなるのは、私だけだろうか。こんな先取り商戦が、クリスマス本来の意味や良き文化の伝承を妨げ、人にとって大切な季節感さえ狂わせてしまうと思うと、怒りさえこみ上げてくる。つい、その人だかりに向かって「コマーシャルに惑わされるな!」と叫んでしまう、勿論、心の中で。日本人独特の待つ心や季節感は、いったいどうなっているのだろうか。
ところで、ある調べによると、日本の主要都市において、11月第二週目までにクリスマスイルミネーションの点火を終えた箇所は、東京都内で21箇所、愛知県内で6箇所、大阪府内で8箇所、福岡県内で13箇所、そして沖縄で1箇所の合計49箇所というから、名古屋駅に限ったことではないことになる。2004年消費者情報トレンドの調査によると、日本人の8割は季節感を大切にしているといい、それを感じるものや事柄のトップ5は、「季節のイベント・行事」(72%)、「果物」(70%)、「植物・花」(60%)、「野菜」(52%)、「ファッション」(45%)という。この調査結果からみても、商戦による前倒しイベントや先取りファッション、または早期栽培などによる季節を越えた植物の消費者供給などが、地球温暖化と変わらぬくらいの影響を、人々の生活や心にまでも与える要因になると言える。30年前に比較すると、クリスマスイルミネーション点灯式は平均42日早くなったというが、何故そんなに急がなきゃならないのか、ちょっと立ち止まって考えてみてはいかがだろう。
さて、クリスマスの飾りもさることながら、クリスマスをどこでどう過ごすか、何を誰にプレゼントするかも、この時期、話題のひとつ。某ホテルの季節プラン、一泊二日のクリスマスパック200万円が、比較的若いカップル・夫婦によって既に売り切れという今年、バブル期を想起させる。インド独立の父であり、宗教家・政治指導者でもあるマハトマ・ガンジーの言った「素朴な生活にこそ幸せがある」が頭によぎる。今週、アメリカではサンクスギビング(感謝祭)、家族が集い、実りと健康を感謝し、この日を境にクリスマスを迎える準備、待降節に入り、家庭も街もイルミネーションの点火が始まる。そんな“待つ”という粋さが、日本人にもあって欲しいと願う。そんなに急がなくても、師走はやってくるのだから・・・っと呟く、さくらの独り言。
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