私の詩吟歴も8年になりました。日本の伝統文化の一つと言える詩歌吟詠ですのでその奥が深く、何十年続けても奥義を究めることは不可能でしょうが、それでも8年も先生(師範)について習っていればいつまでも「新人です」とはいえないようです。
尤も、私がそもそも詩吟に興味を感じ、会に入門した動機は吟詠の達人になるためではなく“なんとなく興味を覚えた”程度ですので一向に上達しないのも当然です。
詩吟とは漢詩に節を付けて吟ずることを言いますが、さすがに日本古来の伝統芸術であり、その奥の深さに今更ながら感じ入っているところです。
南カリフォルニアにはいくつかの詩吟流派の会が存在しますが、私達の会もそのひとつです。私のような進歩が遅く、出来の悪い生徒も、週一回詩吟クラスに通い、師範の先生に迷惑をかけながらも和気藹々と楽しく研鑽に励んでいます。
「最近の日本人の皆さんは詩吟をどのように理解しているのだろうか?」 ――― こんな疑問から私のまわりにいる友人・知人を対象に調べてみました。
「エッ、シギン?何ですかソレ?」、「あゝ、ナニワ節みたいに唸ってる変なもの!」といった反応(回答)から「詩吟って、“ベンセイ、シュクシュク・・”のこと?」、「時代遅れの難しい節回し!」、「あんな大声は私には無理!」といったものまでまさに十人十色でした。
さすがにある程度の年齢に達している日本人は詩吟に対する理解度は高いようでしたが、若年層になるにしたがって詩吟はおろか漢詩さえ知らない人がいるのには少々驚きでした。
“古臭いもの”というイメージが定着している詩吟を若年層に普及する方法はないものだろうか? そこで先ず詩吟の効用を考えてみました。
(1)
心身の健康に資する:腹の底から声を出して詩を吟ずる呼吸法は内臓を強くし、身体内から活力を生み、その上ストレスの解消にも役立ち、心身最高の健康法のひとつである。――― 私達の流派の会では90歳以上の会員もおり、かくしゃくとして詩吟を吟じています。この事実こそ詩吟が心身にわたる健康法である何よりの証拠といえましょう。
(2)
歴史、文化の勉強が出来る:吟ずる漢詩は主に中国、日本の歴史や文化を題材とするものが殆どです。自然に歴史への興味がわき、文化を学ぶことが出来ます。
(3)
漢字の読み書きの機会が増える:コンピュータ時代の今日、私たちは自分で漢字を書くことが少なくなっています。私自身も最近は紙の上にペンで字を書くことは殆どなく、原稿もメールもパソコンのキーボードに頼っています。漢字を書くのは詩吟クラスだけと言っても過言ではないほどです。
私にとって詩吟とは、趣味であると同時に実益をも兼ねた最高の余暇利用法と言えましょう。
私達の詩吟の会では、全員による吟詠大会が春・秋に開催され、吟詠・吟舞の二部門について、半年間の成果を発表しています。
先日、恒例の2006年秋季大会がロングビーチ市の日系人会館で開催されました。私が選んだ吟題は「結婚を賀す(並びに和歌)」(松口月城作)でした。
婦(つま)となり夫となる これ宿縁
同心一体 天に乖(そむ)かず
幾千代の ちぎりなるらん常磐(ときわ)なる
松のこずえに 鶴の巣ごもり
人生の航路 あに容易ならんや
永久(とこしえ)に違(たが)うことなかれ 貞と賢と。 |
健康志向、教養志向の現代人にとって詩吟の効用はぴったりではないかと思います。皆さん詩吟の世界にもっと興味を持ちましょう。
河合 将介(skawai@earthlink.net)
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