日本の海上自衛隊の遠洋練習航海部隊が今年も8月7日から10日まで米国西海岸サンディエゴへ寄港し、艦内の一般公開がありました。(8月7日、8日、9日の3日間)
折角の機会でしたので早速私たち夫婦は公開初日にサンディエゴへ馳せ参じ見学してきました。
今回寄港したのは練習艦「かしま」・「やまぎり」と護衛艦「あまぎり」の三艘からなる艦隊でした。
外国の艦隊の寄港など珍しくもないサンディエゴであり、また日本人コミュニティに対する広報不足、公開日が週末でないこともあってか、公開初日は訪れる現地人、日本人ともに少なく、私たちが三艘を観てまわった数時間で目にした見学者はせいぜい百人程度でした。
これら日本の艦隊が停泊した隣の桟橋には米国海軍を引退した空母「ミッドウエイ」が空母ミュージアムとして公開されていますが、そちらの方が賑やかでした。
それだけに私たち日本艦隊への訪問者は落ち着いてゆっくり見学の機会を得、案内・誘導にあたっていた教官や訓練生たちと会話もはずみ、日本の海上自衛隊や艦船・装備・訓練などについて具体的に知ることが出来、まことに有意義な時間でした。
今回の海上自衛隊・遠洋練習航海部隊の各艦には今春、幹部候補生学校を卒業した初級幹部も含め約750名の海上自衛官が乗船しているのだそうで、彼らのシーマンシップを育成するとともに、国際的視野を養い、あわせて訪問国との親善を深めるのが目的とのことです。
4月19日に日本を出航し、9月5日に帰港するまでの半年近く、北米・中米12の港を巡りながらの訓練なのだそうで、航海に明け暮れる海上自衛官たちは日焼けのたくましい姿でしたが、幼な顔の残る若い隊員たちも多く、苦しく過酷な訓練に明け暮れているであろう割には皆明るく屈託のない顔つきでした。
見学通路整理係りの若い隊員に「訓練は厳しいでしょうね。海が荒れた時など船酔いはしませんか?」と聞いたら「最初のうちはつらかったです」と笑いながら本音で答えてくれました。
女性乗組員も結構いるようで、彼女たちだけのグループで束の間の休日を楽しむため街に出てゆく姿とも出会いました。
今回の艦船のうち「あまぎり」「やまぎり」はDD(旧海軍では駆逐艦)であり、全長137メートル、基準排水量三千五百トンと自衛艦(軍艦)としては決して大きなものではないようですが、いくつものレーダー装置や、防空・対潜・水上打撃力となるミサイルや魚雷などを艦のいたるところに搭載し、現代の軍艦装備の一部を見せられた感がしました。
なお「かしま」は練習船専用の船で他の2艘よりやや大きい艦船でした。この船は練習船であるため、各種シミュレーターを装備していたり、寄航地での来賓接待にも対応できるような設備を有したり、婦人自衛官用の居住区も設けられているのだそうです。「かしま」艦内に日本の鹿島神宮の神棚が飾ってあったのがいかにも日本的でした。
海上自衛隊といえども、しょせん軍隊(海軍)であり、その意義について議論はあろうかと思いますが、私たち見学者に誠意を持って対応してくれ、その上礼儀正しい乗組員には理屈抜きで好感が持てました。
また、各艦とも隅々に到るまで見事なまでに清掃がゆきわたり、磨き上げられており、訓練と規律の厳しさを感じつゝも日本人の心を見た思いでした。
艦首と艦尾にはためく日の丸(国旗)と旭日旗(軍艦旗)
――― 海外の港で出会う自国日本のシンボルはナショナリズムとか軍国主義とか無関係に懐かしくうれしいものです。
私たち夫婦は日程の都合で行けませんでしたが、2日目の8月8日にはサンディエゴ市バルボア公園内の日本庭園で日米交歓親善コンサートも開催されたそうです。
日本人にとって8月という月は暑い夏であると同時に、もうひとつ忘れられないのが61年前の8月、日本が敗戦した終戦記念日の月でもあることです。日本の練習艦隊が米国を訪問するなど61年前には考えられなかったことでしょう。
平和なるがゆえの艦隊訪問と前向きに捉えたいものです。
河合 将介(skawai@earthlink.net)
|