一年を通して、シックなスーツ、ホワイトシャツにいかすネクタイの弊社社長Aさんは、長身と人柄のセンスも相まって、なかなかかっこいい。就職した時から、カラーシャツは一切着ないといい、事実私は、休日出勤かゴルフの時以外、ネクタイをはずしたAさんの姿を見たことがなかった。先日、私のディスクへ立ち寄ったAさんの、そのホワイトシャツにぶら下がるネクタイがない。今話題のクール・ビズかと訊ねると、「単にネクタイに染みがついたので、はずしたのだが、なかなか涼しくていいものだ」という笑い話。見慣れないネクタイなしのホワイトシャツ姿のAさんもなかなかいい。それは容姿だけでなく、社長自ら部下のディスクへ足を運ぶオープンな姿勢がかもし出すもの・・これを私の故郷の熊本弁では「武者ん良か」(むしゃんよか)という。
「武者ん良か」というこの熊本の方言は、単に武士のようにかっこいいとよく言われるが、武勇があって潔いだけでなく、その人物に裏表がなく正直で、自分の正しいと思うことを陰険な策略を使わず突き進むことを表す。だから、熊本人から「武者ん良か」と言われることは、大変な褒め言葉と言っても過言ではない。それに引き換え、話題のクール・ビズに協力的な自民党の一部、胸元から金のネックレスなどちらつかせ、全く品がない。一方、非協力的な自民党の一部である大物議員は、バッジのついてスーツにネクタイを崩さず、郵政民営化の反対をアピールするが、これもまた単に歳をとったガキの群れを感じ、無様に見える。いずれも、クール・ビズが“さま”になっていないばかりか、清き一票で選ばれた者のミッションもなく、「武者ん良か」とは、とうてい呼べない。クール・ビズの語源説には色々あるが、アメリカのアイビーリーグ出身者のボーイズクラブが使い始めた言葉であることは、あまり知られていない。その意味は「さぁみんな、かっこよく(Cool)、仕事(Biz)しょうじゃないか!」。環境省のクールビズ推進は、地球温暖化の危機のみならず、仕事人としての危機への呼びかけではないだろうか。そしてそれを率先して応えて見せて(実行して)くれるのが、各業界のリーダーであったり、国を司る議員などのミッションではないだろうか。
ところで、クー・ビズという地球温暖化防止国民運動を、環境省地球環境庁はどのようにうたっているのだろうかと、調べてみた。『地球温暖化問題は経済社会活動、国民生活全般に深く関わるもので、国、地方公共団体、事業者、そして国民一人ひとりが協力して取り組むことが必要です。そこで、京都議定書の発効を契機として、愛・地球博や地球温暖化問題をメインテーマにしたG8サミット、温暖化防止に関係する各府省によるイベント・キャンペーン等と効果的に連動し、経済界を始めとする各界と連携しながら、各種メディアを有機的に用いて、地球温暖化の危機的状況を伝えるとともに6つの具体的な温暖化防止の行動の実践を促して国民運動を推進する集中キャンペーンを実施します。国民一人ひとりや企業・各種団体が具体的な温室効果ガス削減行動を宣言し、実践していただくことによって、地球温暖化防止の輪を広げていくことを目指すものです。6つの具体的な温暖化防止の行動のよびかけは、@冷房は28度に設定しましょう(温度調節で減らす)。A蛇口はこまめにしめましょう(水道の使い方で減らす)。Bエコ製品を選んで買おう(商品の選び方で減らそう)。Cアイドリングをなくそう(自動車の使い方で減らす)。D過剰包装を断ろう(買い物とゴミで減す)。Eコンセントをまめに抜こう(電気の使い方で減らす)。』また、「チームマイナス」という愛称があり、その内容は『6%地球温暖化防止「国民運動」の愛称を「チーム・マイナス6%」としました。「チーム・マイナス6%」とは、京都議定書による我が国の温室効果ガス削減約束である“マイナス6%”の達成に向けて、個々人で行動するのではなく、みんなで一つの“チーム”のように力を合わせ、チームワークの意識を持って、みんなで一丸となって地球温暖化防止に立ち向かうことをコンセプトとしたものです。
チームリーダーは、小泉純一郎内閣総理大臣(地球温暖化対策推進本部長)で、運営事務局は、環境省の地球環境局、その下に「チーム・マイナス6%」運営事務局を設置します。』(環境庁HPより)http://www.env.go.jp/earth/ondanka/kokumin/index.html
この提唱を今一度、国会議員一人ひとりに、熟読いただきたいと願うのは、私だけだろうか。さらに、都議会選挙告示後の今、立候補者の宣伝カーが都内を駆け巡る。
“1候補に1台”と、選挙カーのクール・ビズなんてことを、力を合わせて実践できないものかと疑問に思う。
自分のクール・ビズはと振り返ると、クライアントとのミーティングがある場合はスーツ、内勤の場合はオフィスカジュアルで通している。そのため、完璧クールビズ派ではないと反省する。温暖化は「みんなで渡れば怖くない」風に、一人ひとりが、みんなが、やらねば効果は生まない。ただ、そこには、何かフォームという形だけではない内外・本音と建前に貫かれるイメージ、それこそ「武者ん良か」が感じられるものがあって欲しいと願う。先月亡くなった服飾評論家の石津謙介氏は「ダンディーとは、自分流を貫くこと」と言い残した。衣替えを機に開始されたこのクー・ビズ、自分の衣替えも考えて「武者ん良か」を目指してみようか・・・と呟くさくらの独り言。
(kukimi@ff.iij4u.or.jp) |