小さい頃読んだ偉人伝の多くは、幼少時期における家庭や家族、師や友、健康や生活の境遇がその路を決定した主要素だったと記憶する。偉業を成し遂げたその人たちは、初代であろうと何代であろうと、徹頭徹尾守り通した何かがあった。それに似た人生や生活の指針となる哲学や教えは、偉人とは到底言いえない平平凡凡な私も与えられており、その多くは、両親や恩師、そして友人からのもの、財産だと思っている。中でも今は亡き父が常々諭してくれて言葉、「父さんの今があるのは全て友人のおかげ、お前も友人が財産と言える生き方をしろ」は、財産目録に代わる我が家の家訓となっている。
昨今、西武鉄道による大株主保有株比率の虚偽記載問題で逮捕された堤義明コクド前会長は、西武グループ創立者の父・康次郎氏から何度も諭された事、それは「友達はつくるな」だったという。生まれた時からオーナー大企業の社長になる者として学んだ帝王学に貫かれたもの、それは「王国の主に対等の関係は必要ない」だったという。ある経済誌に掲載されたで堤氏の対談記事で、今でも忘れられない発言がある。「頭を使うのは自分一人でいい。頭脳のいる仕事は外部に求めればいい。頭のいい連中は、忠誠心とは関係なく、金さえ払えばいくらでもいい知恵を出す」だ。こうなったら、社長であるだけでもモノを申せない周りが、今や死語となったイエスマンだらけとなるのも当然だ。膨大な財産目録を増やし守るための諭し「友達はつくるな」は、今やその目録さえも失わせてしまいかけている。誰もできない経験を、好きなことを好きなだけやれた堤氏の人生70年の間に、“友達”の意味を示唆させる財産は本当になかったものだろうか。
今までに親しんだ、友人、友情に関する格言を調べると・・・
- 「友情のための最大の努力は、友人に我々の欠点を見せることではない。彼に彼の欠点を悟らせることだ。」(ラ・ロシュフーコー)
- 「友人同士は完全な平等のうちに生きる。この平等は、まず第一に、彼らが会ったときに社会上のあらゆる相違を忘れるという事実から生まれる。」(ボナール)
- 「真の友をもてないのはまったく惨めな孤独である。友人が無ければ世界は荒野に過ぎない。」(フランシス=ベーコン)
- 「友人の果たすべき役割は、間違っているときにも味方すること。正しいときにはだれだって味方になってくれる。」(マーク・トウェーン)
- 「自分にとって大切なことは、他人が自分のことをどう考えているかということではなく、自分が彼らのことをどう考えているかということだ。」(ブリヤン)
- 「困難な情勢になってはじめて誰が敵か、誰が味方顔をしていたか、そして誰が本当の味方だったかわかるものだ。」(小林多喜二)
- 「友人の失敗には目をつぶれ、だが悪口には目をつぶるな。」(フランスの諺)
- 「友人に不信をいだくことは、友人にあざむかれるよりもっと恥ずべきことだ。」(ラ・ロシュフーコー)
- 「友情は瞬間が咲かせる花であり、そして時間が実らせる果実である。」(コッツェブー)
- 「人生から友情を除かば、世界から太陽を除くにひとし。」(キケロ)
- 「友とぶどう酒は古いほど良し」(イギリスの諺)
- 「友情とは二つの肉体に宿れる一つの魂である。「(アリストテレス)
- 「友人とは、あなたについてすべてのことを知っていて、それにもかかわらずあなたを好んでいる人のことである。」(エルバード・ハーバード)
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“友”という字は、手と手を重ねて出来た字で、手を取り合うこと、助け合うことの意味がある(光村教育図書)。この真髄を求めなかった王国の主が活躍した半世紀とは違い、その半世紀の半分の年齢でありながら、女子ゴルフツワー開幕戦で活躍する女子プロゴルファーが眩しい。「ゴルフを教えてくれたのは、父だった。負ける悔しさを教えてくれたのは、二人の兄だった」とは、日本いや今や世界の宮里藍出演のチョコレートコマーシャルでのメッセージだ。彼女は今、家族に教えられたことを真髄に、ライバルでもある友人・横溝さくらとともに、有形無形の財産を創出しているように思える。友達に関する格言をかみ締めながら、私もゴルフ、がんばろっと・・・呟くさくらの独り言。
(kukimi@ff.iij4u.or.jp) |