龍翁余話(642)「9.11は“愛国者の日”(米国)」
翁は毎年、日本カレンダーと米国カレンダーの2種類を使用しているが、米国カレンダーの9月第1週(6日〜12日)に、2つの“祈念日”が明記されている。その1つは7日の『労働者の日』(labor Day)、もう1つは11日の『愛国者の日』(Patriot
Day)。
『労働者の日』とは、南北戦争(1861年〜65年)の後、アメリカの労働者たちは人権無視の厳しい労働条件を強いられ、家畜同様の扱いで朝から晩まで働かされていた。労働者たちは1878年にセントルイスでストライキを敢行、“1日8時間労働”の権利を獲得した。これが『Labor
Day』の起源だとか。以後、ニューヨーク州やオレゴン州で“州法”として制定されたが、アメリカ議会で公式に(毎年9月第1月曜日を)『labor
Day』(祝日)としたのは1894年だったそうだ。『労働者の日』と言えば5月1日の『May
day』があり、世界各地で“労働者の祭典”が行なわれているが、翁は『Labor Day』と『May
Day』の違いをよく知らない。ヨーロッパでは『May
Day』(5月の日)は、もともと「夏の訪れを祝う日」という趣旨であったそうだが、国によっては(日本もそうだが)労働者が一致してデモ行進などを行ない「労働者のさまざまな権利を要求する活動の日」としている。
日本では(アメリカの『労働者の日』とは趣旨が異なるが)11月23日に『勤労感謝の日』と言う祝日がある。これは1948年(昭和23年)に制定されたもので、それまでは飛鳥時代(聖徳太子が摂政になった593年から藤原京への遷都が完了した694年までの101年間)に始まった『新嘗祭(にいなめさい)』と呼ばれ「五穀豊穣」と「皇室の安泰」を祈念する行事であった。『勤労感謝の日』になってからは「勤労を尊び、生産を祝い、国民互いに感謝し合う」と言う趣旨に変わった。(『勤労感謝の日』については、いずれかの機会に)
さて、もう1つの“祈念日”9月11日の『愛国者の日』――9月11日と言えば、忘れてならないのが全米を、いや世界中を震撼させた「アメリカ同時多発テロ事件」である。この『愛国者の日』は(もともと)アメリカ独立戦争の緒戦となる1775年4月19日のレキシントン・コンコードの戦いを記念して制定されたものだそうだが、2001年9月11日のイスラム過激派テロ組織アルカーイダによる『アメリカ同時多発テロ事件』以後、テロで犠牲となった2,977人を追悼し、祈りを捧げる日として制定された。事件が起きた直後にブッシュ大統領(当時)は(9月11日を)“犠牲者に対する追悼・慰霊の日”としたが、翌年9月に(ブッシュ大統領は)9月11日を『愛国者の日』と宣言した。その後(2016年9月)オバマ大統領(当時)は9月11日を『愛国者の日・国家奉仕と追悼の日』と宣言、そしてトランプ大統領も(過去2人の大統領と同様)9月11日を『愛国者の日』と宣言した。多くのアメリカ人は、この日を『ナイン・イレブン(9月11日)』と呼び、ほとんどの州で(この日)午前8時46分から1分間の黙祷を捧げ、場所によっては犠牲者に対する追悼・慰霊の“祈念行事”を行なっているそうだ。翁も、この日は絶対に忘れられない。2001年9月11日の夜(たしか22時前だったか)翁宅の固定電話がけたたましく鳴った。翁はすでに眠っていた。「誰だ?今時分に電話する奴は」と思いながら、しぶしぶ受話器を取った。それはニューヨークの友人(当時ジャーナリスト)からだった「テレビを視てくれ、ワールドトレードセンタービル(ツインタワー)に旅客機が突っ込んだ!」興奮気味の彼の上ずった声。急いでテレビ(NHK)をつけた。確かに世界貿易センタービル(北棟)の上の方が燃えている。翁「これ、テレビドラマか?」と訊いたら、彼は怒鳴った「ライブだ、テロだよ、あ、もう1機が突っ込んで来る、オー・マイ・ガッド!」そこで電話が切れた。今、燃えているビル(北棟)の隣のビル(南棟)にもう1機が突っ込んで来た。翁、テレビを視ながら息を呑んだ。
あとで分かったことだが最初(8時46分=日本時間21時46分)に世界貿易センタービル北棟(110階建て)の94F〜98Fへ激突した旅客機は、アメリカン航空11便(乗客81人、乗員11人、乗っ取り犯5人?)、そのあと(9時03分=日本時間22時03分)ユナイテッド航空175便(乗客56人、乗員9人、乗っ取り犯5人?)が南棟(110階建て)の上層階を目がけて突っ込み(写真左)、ツインタワービル(両棟)は炎上(写真中)102分後に崩壊した(写真右)。翁は、この悲惨な情景を番組終了まで視続けた。(写真はAP通信社)
更に、(これもあとで知ったことだが)アルカーイダによる旅客機ハイジャック(テロ)は、ニューヨーク世界貿易センタービル突撃の2機だけではなかった。3機目のアメリカン航空77便(乗客58人、乗員6人、乗っ取り犯5人?)はバージニア州アーリントンに在るペンタゴン(アメリカ国防総省)の建物に激突、4機目のユナイテッド航空93便(乗客は日本人1人を含む37人、乗員7人、乗っ取り犯4人?)はアメリカ合衆国議会議事堂かホワイトハウスを狙ったようだが、途中(シャンクスヴィルで)墜落。この一連のテロ事件による死亡者は3,977人(ほかに乗っ取り犯19人?)、負傷者6,300人以上。
当時、世界貿易センタービル(北棟・南棟)にオフィスを構えていた日本企業は銀行・証券・保険・IT企業など30数社、報道によると9.11のWTCテロによる邦人犠牲者は24人だったとか。受難の企業や犠牲者のご遺族は、当然“追悼と慰霊の1日”だろう。翁もこの日を『鎮魂と平和への祈りの日』としたい・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |