龍翁余話(631)「“コロナ禍中”の浅草散策」
先週の日曜日(6月14日)の昼、スペシャルドラマ『渥美清のああ青春日記』(BSフジ)を視た。翁は知らなかったが、このドラマ、渥美清が亡くなった1996年(平成8年)の翌年(1997年)の“渥美清・追悼作品”だったそうだ。渥美清がまだ世に出る前『浅草フランス座』(当時はストリップ劇場。渥美清、萩本欣一、ビートたけしら多くの芸人を輩出した。現在はお笑い演芸ホール『東洋館』)で渥美清がコントの舞台に立っていた頃の、哀しく切ない青春のひとコマ。ドラマを視終わって、フト“コロナ渦中の浅草の様子を見よう”と思い立ち、曇り模様の数日前『浅草散策』に出かけた。
ウイークデーの昼前だというのに雷門周辺や仲見世のこの閑散さは「国内外の観光客の姿を見なくなってもう3か月以上にもなる」(仲見世・某店主の話)。雷門から宝蔵門までの約250mの間にある仲見世の各店(東側54店、西側35店)は、(翁が行った時は)全店がオープンしていたが何せ観光客がいないので店員の“呼び込み”(声)も聞こえて来ない静けさ(寂しさ)だ。宝蔵門をくぐって本堂へ。周辺に数人の参拝者を見かけた程度。本堂参拝のあと(江戸時代の情緒を残す)伝法院通りを抜け左折すると『浅草公会堂』。その玄関前に「スターの手形コーナー」がある。歌舞伎・映画・テレビ・舞台などで活躍した俳優・女優・歌手・落語家・漫才師・講談師・浪曲家・漫談家らのほかに相撲・野球などで活躍した人、また作詩家・作曲家・作家など332人の手形やサインが設置されている(故人ばかりでなく現役スターの手形もある)。いずれも“懐かしの人”ばかり。中でも翁が好きな作家・池波正太郎や現在放映中のNHK朝ドラ『エール』の主人公のモデル
と言われている作曲家・古閑裕而の手形をカメラに収めた。
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美空ひばり(左) 池波正太郎(右) |
小沢昭一(左) 古関裕而(右) |
『浅草公会堂』の前(オレンジ通り)を進んで直ぐ右折すると『浅草六区通り』に入る。
全長100mの通りの両側の街路灯には渥美清、エノケン(榎本健一)、コロンビア・トップ、伴淳三郎、萩本欣一、東八郎、内海好江・惠子、由利徹、三波伸介ら六区ゆかりの芸人・俳優ら33人の写真が飾られている。そして浅草六区中心街(六区ブロードウエイ)出ると、いよいよスペシャルドラマ『渥美清のああ青春日記』の舞台となる『浅草フランス座』(現在の浅草演芸ホール・東洋館)がある(下の写真)。
新型コロナウイルス感染症拡大防止を目的とした東京都の“休業要請”が6月12日に解除され、当演芸ホールも翌13日から再開業したばかり。入口には感染症予防のため(来客への)注意事項が掲示されている。玄関先のスタッフに聞いたら客席数(1〜2階合わせて)340席のところ(客席の間隔を開けて)当分は170席で営業するそうだ。落語・講談・漫才・手品など一流芸人の“生の技”を目の前で観て(通常料金)3000円は安い。まさに“大衆芸能のメッカ”の名に相応しい「お笑いの殿堂」である。
雷門前の道路の向かい側にある『浅草文化観光センター』に立ち寄り「コロナ禍中の浅草のイベント」について訊いた。例年行なわれている催事の多くが中止または延期になっている。例えば3月18日の「金龍の舞」、4月12日の「白鷺の舞」、4月18日の「浅草流鏑馬」などが中止。5月15日〜17日の「三社祭」は10月中旬に延期、以下7月の「七夕祭り」、「朝顔祭り」、「ほおずき市」、「隅田川花火大会」、9月の「台東薪能」、「浅草サンバカーニバル」などが軒並み中止。翁に説明してくれたスタッフが呟いた「雷門に人だかりが無い、人力車の兄さんたちの呼び込み声も聞かれない、こんな寂しい浅草が続くのは悲しい」――そのスタッフから20日の夕方、翁に連絡があった「東京都が19日に“自粛解除”したので今日(20日)の浅草は50%の賑やかさを取り戻しました」その弾んだ声に何だか翁もホッとした。“寅さんもきっと安心しているだろう”。「浅草の灯」は、やはり明るくなければ・・・と、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |