龍翁余話(498)「府中の森公園で“芸術の秋”」
翁、気のせいだろうか、今年の秋は短いように思う――「暑さ寒さも彼岸まで」と言うが、今年は9月26日の秋彼岸明けでも(東京は)まだ真夏日が残った。ところが10月中旬になって関東地方を中心に冷たい雨が降り続き、昼間の気温11度、これは真冬の2月並みの寒さだったとか。10月中旬で東京がこれほど低い気温になったのは(気象観測史上)初めての記録だそうだ。関東周辺で標高の高い所では積雪が見られた(というニュースも伝わった)。そして10月22日に発生した台風21号が豪雨を伴って南西諸島を直撃、23日には本州にも上陸して各地に大きな被害をもたらした。更に1週間後の29日から30日にかけて台風22号が(日本列島上陸はなかっ たものの)広範囲に大雨を降らせ、東の海上を暴れ回って通過した。この2つの超大型台風の後、関東地方はようやく爽やかな秋空が広がった。これから本格的なスポーツの秋、芸術の秋、味覚の秋とホッとしていたら、もう立冬(11月7日)だ。寒がりの翁は朝晩の冷え込みで、すでに暖房(エアコン)を必要としている。11月の別名““霜降月(しもふりづき)”“雪待月(ゆきまちづき)”そのものの今日この頃。だから、余計に“短い秋”と思うのだ。
そんな“短い秋”の貴重な晴れ間の某日、都立『府中の森公園』へ出かけた。紅葉にはまだ少し早いが、目的は園内各所に設置されている“彫刻”鑑賞である。と言っても翁、それほど彫刻に造詣が深い訳ではないが、観るのは好きだ。たまたまドライブの行き先などで彫刻を見かけると、しばし足(車)を止めて鑑賞したりする。今回『府中の森公園』行きを思い立ったのは、今年の文化功労者の1人に選ばれた彫刻家・雨宮敬子(あめのみやけいこ=1931年〜)の作品を観たいと思ったのが動機だ。(蒙御免:敬称略=以下、同じ)
『府中の森公園』は東京都府中市浅間町にある都立公園。旧米軍基地の跡地、道路を挟んで東隣に航空自衛隊府中基地がある。航空基地と言っても滑走路はなくヘリポートがあるだけ。公園の面積は約17万1,500u、東京ドームの約3倍だとか。JR中央線武蔵小金井駅から府中駅行きのバスに乗り(小金井街道)一本木バス停で降りて公園正門に入ると一直線のプロムナード(中央の噴水まで約250m)が目の前に延びる(写真)。直ぐ左側に府中市美術館、小野球場、テニスコート、サッカー・ホッケー場、ゲートボール場、バーベキュー場、市民聖苑、公園サービスセンター、右側には子ども水遊び場、遊具広場、(噴水に近づくと)広々とした芝生広場。サービスセンターで公園マップとアートマップ(彫刻設置案内図)を貰って早速、散策開始。噴水から左に曲がり、日本庭園を過ぎると(公園に隣接した)『府中の森芸術劇場』。その辺りから本格的な“森”が広がる。森の中の植物はキリ・クヌギ・ケヤキ・ヒマラヤスギ・金木犀・ツバキ・ハナミズキなど。それらの樹木の中に雨宮敬子の作品『少年』が真っ先に翁の目に飛び込んで来た(写真左)。それにしても翁が知っている雨宮敬子の作品は裸婦像が多いのに“少年像”とは珍しい。「爽やかな少年の美的躍動感を表現した」との作者の言葉がアートマップに掲載されている。
『少年』の近くに、笹戸千津子(ささどちづこ=1948年〜)作の『少女』(像)がある。(写真中)「少しおどけたポーズの、子どもらしい優しさを表現した」そうだ。そういう作者の“製作意図”を感じながら1つ1つの作品を鑑賞していると時間が経つのも忘れるほど魅入ってしまう。ちょっと離れた場所に(人物ではないが)大きな鳥の彫刻があった(写真右)。柳原義達(やなぎはらよしたつ=1910年〜2004年)作『道標・鴉(カラス)』の題名が付いていた。(解説には)「柳原は自宅で本物のカラスを飼うほどカラス好きで、カラスの躍動的なエネルギーを表現した」とある。その他、同公園内には朝倉響子(あさくらきょうこ=1925年〜2016年、朝倉文夫の次女)の『アンとミッシェル』、舟越保武(ふなこしやすたけ=1912年〜2002年)の『鳩を持つ少年』など全部で10点の作品が展示されているが紙面の都合上、7点は割愛させていただく。
“彫刻鑑賞”もいいが、せっかく来たのだから“紅葉鑑賞”もと思い、もう一度日本庭園に戻って(少し早めの)紅葉を味わった。彫刻も紅葉も満喫。長雨・寒冷・台風での憂鬱を一挙に晴らしてくれた“芸術の秋”であった・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |