小田原探索
月曜日(北海道)火曜日(京都)水曜日(旧軽井沢)木曜日(木曽路)金曜日(新軽井沢)ジャパンレイルパスが使える日は残すところ後2日になった。あちこちトンボ帰りの旅行をしている私に母が“そんなにあちこち行けて途中下車出来るのだったら、小田原に行って漢方薬を買ってきてくれないかしら?”と言った。
その漢方薬はそこでしか売っていないらしくネット販売もしないらしい。それにも関わらず全国から人が買いに来るとかで有名な店らしい。小田原と聞くと蒲鉾と小田原提灯ぐらいしか浮かばなかったけれど何か見どころが他にあるかもしれないと思って土曜日は小田原に行くことに決めた。例によって小田原の駅に着くとすぐに観光局に行って付近の地図をもらった。この漢方薬を売っている店の話はいつか別の機会に書こうと思う。今回は小田原が生んだ二宮金次郎の事を書こうと思う。漢方薬を買って地図を見ていたら漢方薬のお店から遠くないところに二宮金次郎の神社がある事がわかった。行ってみると入口付近に彼の銅像とその横に彼の名言が書かれてあった。“経済無き道徳は虚言であり道徳無き政治は悪であり犯罪である”思わず、一人で深く、うなずいてしまった。 その言葉が、遥か昔、江戸時代に生まれた二宮金次郎の格言であるという事に驚いた。神社の境内を歩きながら数年前に偶然訪れた二宮金次郎の記念館での強烈な思い出が蘇ってきた。その記念館は小田急線の栢山という駅で下車して15分ぐらい歩いた所にある。当時、その近くに用事があって出かけた時に時間があったので時間潰しに寄ったのが切欠で二宮金次郎に対するイメージが大きく変わった。記念館は開館時刻と同時に入ったので、まだ誰も人がいなく館内はシーンと静かだった。記念館は幼少の頃の二宮金次郎から大人になって世の中に貢献して働く様子が実物大の人形で展示されており子供でも大人でも、わかりやすく説明されていた。
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二宮尊徳 |
二宮尊徳神社 |
二宮尊徳関係本 |
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きんじろうカフェ |
報徳博物館 |
二宮尊徳 格言 |
最初のブースを見ていたらニコニコしながらボランティアの人が挨拶してくれた。“二宮金次郎の事でしたら、何でも私に質問してください”と。それまで私の乏しい知識では二宮金次郎という人は薪を背負って本を読んでいる熱心な勉強家だったという事ぐらいしか知らなかった。私は“ありがとうございます。見終わりましたら必ず質問します。”そう言って一つ一つの展示場をじっくり見て回った。ところが、そのボランティアの人はずっと私の背後に一定の距離を置きながらついてきた。いつでも何か質問があったら答えられるように待機していたような感じだった。私も、そのブース事に質問したい衝動を抑えながらとりあえず一通り見学してから質問を始めようと思った。一通り見終わって、くるりと振り返るとそこにボランティアの人が立っていて私の質問を待ち構えていた。私の最初の質問は“あの〜どうして二宮金次郎さんは離婚なさったのですか?”突拍子もない私の質問にも関わらず、そのボランティアの人は間髪入れず“それはですね”と全く淀みなくその理由をカクカクシカジカでありましてと立派に解説をしてくれた。立て板に水とは、こういう事を言うのだな〜と私は感心した。それから今来たブースを戻りながら二宮金次郎の考える民主主義とは何なのか、どうやって全国600以上の村民を助けたのか、彼が幼少の頃にどんな本に出会ってどうやって人間形成されていったのかを立て続けに聞きまくった。どんな質問にもその方は全てパーフェクトに答えられた。どこから、どういう角度で質問しても全て即答状態で何だか私にはそのボランティアの方に二宮金次郎が乗り移っているかのような錯覚さえ感じた。そのボランティアの方の二宮金次郎に対する尊敬とそれを伝えたいという情熱を感じてとても感動した。二宮金次郎さんは日本の復興事業の第一人者であり経済、政治、土木から道徳と多岐にわたって学び人の為に活躍されたすごい人物だったのだそうだ。聞くと館内には二宮金次郎さんについて書かれた本や文献や研究書などがある図書館があると言う。そこにも案内された。まだ時間があったのでお勧めの本はありますかと聞くと“この本もいいですよ。あの本もいいですよ”とたちまち私が座ったテーブルには5〜6冊の本が積まれた。残念ながら時間切れで読むことは出来なかったけれど、このボランティアの方に圧倒されてしまった。
戦前は殆どの小学校に二宮金次郎の銅像が建っていたのだそうだ。私が小学校の頃には、すでに桜の木しか無かった。戦後教育の中で、いいものも一緒に抹殺されていった時だったのだろう。
かつて訪れた栢山の記念館の事を考えながら二宮金次郎の神社を参拝して今度はその近くにある二宮金次郎の博物館の方も訪れてみる事にした。ここは二宮金次郎の思想や書物などの展示物が多い博物館だった。会館のオフィスにいるボランティアの方にロスアンジェルスのリトル東京にある二宮金次郎の像の事を話したら興味を持ってくださったのか皆さん出てきて、お話をしてくださった。そして子供たちでも読み理解出来る二宮金次郎さんの本をくださった。二宮金次郎さんの本はアジアでもペルーでも翻訳されて出版されているという事も聞いた。それにしても小田原の人は本当に二宮金次郎の事を誇りに思う熱い人々が多かった。頂いた本は海を渡り今はLAの教育関係の図書館に収まっている。
茶子 スパイス研究家 |