龍翁余話(467)「上野動物園」(超拡大版)
長いこと東京に住んで、上野公園には数知れず行ったのに、上野動物園は素通りしていた。
動物園の、あの独特な悪臭がたまらなく嫌い、いや、そんなことより、もっと大きな理由があったのだ。翁が子どもの時、(龍少年の忠実な家来だった)“忠犬ハチ公”ならぬ“忠犬タロー”との死別があまりに悲しく、その異常とも思われる悲嘆ぶりを心配した母親が、別の犬を飼おう(買おう)としたが、龍少年は頑として拒否、以来、大人になっても小鳥や金魚さえも飼うことが出来ず、動物との関わりを避けて来た。それほどに“タロー”との死別は、龍少年にとっては大きな“トラウマ(心的外傷)”となったのだ。社会人になってペット禁止のアパートやマンション住まいだったし、仕事の関係で留守にすることが多い生活だったこともあって、なおのこと動物とは縁遠くなった。それが近年“老いて童心に返る”心境になったのか、他人様(ひとさま)が犬と散歩しているのを見て「ああ、俺も忠犬ハチ公が欲しいな」と思うこともあるが、そんな時、決まって“忠犬タロー”との楽しかった想い出、悲しい出来事が頭をよぎり欲望を遮る。ちょっと因縁めいた話だが、70年も経つのに未だ“忠犬タロー”は翁の心の中にしっかりと生きているのだ。
そんな話を、先ごろのシニアの集まりで語ったら、仲間の一人から言われた「先日、孫を連れて上野動物園に行きました。私はもう4回目ですが、パンダ・ライオン・トラ・クマ・ゴリラなどの獰猛な動物たちでも、じっと目を見つめていると、何となく彼らの優しさみたいなものが伝わり、心が和みます。龍翁さんも是非、行かれたらいいのでは?春彼岸も間近です。“タロー君”の供養のためにも・・・」そういう精神論に弱い翁、その気になって早速、出かけた。3月初旬のポカポカ陽気の日であった。幅広いマスク・薄い色のサングラスをかけ、帽子をかぶり、カメラバッグを担いで・・・
 |
 |
表門から自動販売機で300円(シニア料金、一般は600円)のチケットを買って入園。直ぐが【東園】。まずは『ジャイアントパンダ』。偶然、ガイドツアーに紛れ込めたのでガイドさんの説明を聴く。「リーリー(雄)とシンシン(雌)は隣り合わせの別居。2月27日に交尾を済ませたが、妊娠するのか、いつ生まれるのか、まったく分からない」とのこと。パンダは基本的には“食って寝る”動物、食う時しか動かない。団体の幼稚園児たちが「こっちを向いて!」と声をかけるが2頭とも一向にこちらを向かない(写真左:シンシン)。翁、しびれを切らして柵に掛けられている写真を撮る(写真右:リーリー)。
『アジアゾウ』体長5.5~6.5m、体高2.5~3.2m、平均体重雄5,400kg(写真左)、雌2,720kg(写真右)。平均寿命60~80年。頭にある2つのコブがアジアゾウの特徴。雄の牙は、雌を我が物にするための(雄同士の)闘いの武器。コアラと同じく雄雌別居。
『インドライオン』体長150~195㎝、体重120~200kg、寿命25~30年。タテガミが短いのがインドライオンの特徴(アフリカライオンはタテガミは長い)。さすが王者らしい雰囲気だ。『ニシローランドゴリラ』中央アフリカ・コンゴに生息。昼行性で夜間は(毎夜)違う寝床を作り寝る。1日当たり1~2km移動する。体長雄170~180㎝、雌150~160㎝、体重雄150~180kg、雌80~100kg。平均寿命40~50年。ここでガイドツアーと離れる。
『スマトラトラ』インドネシアのスマトラ島に生息。動き回るので、シャッターチャンスが難しかった。アングルはよくないが一番いい表情の写真を選んだ。体長雄220~270㎝、
雌200~230㎝、体重雄100~150kg、雌80~110kg、寿命は15~⒛年。『ホッキョクグマ』
体長雄200~300㎝、雌180~200㎝、体重雄400~600kg、雌200~350kg。平均寿命25~30年。日陰で寝そべってばかりで動かず、やむをえずインターネット写真を拝借。
『エゾヒグマ』(写真左)北海道に生息、体長雄190~230㎝、雌160~180㎝、体重雄120~250kg、雌150~160kg、日本に生息する猛獣としては最大。平均寿命30年。『ニホンツキノワグマ』(写真右)体長雄雌とも120~150㎝、体重雄60~120kg、雌40~80kg。胸部に三日月形がついているクマもいるので“ツキノワグマ”の名が付いたとか。本州・四国に生息、平均寿命25年――【東園】には、そのほかサル・トキ・ワシ・タカ・フクロウ・カワウソ・ツル・シカなどのゾーンがあるが、すでに8,000歩も歩いたので、いずれもパス。
日本初のモノレールに乗って【西園】へ(約2分、150円)。大衆食堂でハヤシライスを食べてから、また歩き回る。いきなり、グロテスクな2種に出会う『ヒガシクロサイ』(写真左)はアフリカ全土に生息。体長雄雌290㎝前後、体重350~1,300kg、平均寿命は40年。
『コビトカバ』(写真右)は主に西アフリカに生息、体長150~180㎝、体重180~280kg、
“コビト”と言う名にしてはけっこう大きい。平均寿命15~⒛年。(先入観から)間抜け面に、ついニヤリ。『キリン』は、やはりノッポだ。高さ雄5m前後、雌4.5m前後、アフリカ
中部以南のサバンナ(熱帯草原地帯)などに生息。ユーモラスな表情、優しい眼差しに人気が集まる。さて、目を見張ったのが『ベニイロフラミンゴ』の群れ。その名の通り、辺りを“紅色”に染める。
いつまでも眺めていたい場所だが、先を急ごう。と言っても、実は翁、あまり気の進まない爬虫類ゾーンである。
「何イ?これ?」翁、初めて見る『ガイアナカイマントカゲ』(写真左)南米に生息、全長120㎝、動きが早いので撮影が難しい。それに比べ『イリエワニ』は動かないのでいい写真が撮れた。インド南東部、ニューギニア島、オーストラリア北部などに生息。翁、以前、友人からクロコダイルベルトをいただいた。今も大切にしている。
さて、歩数も12,000歩を超えたので、そろそろ終わりにする。まだまだ沢山の動物たち(500種以上)が飼育されているが、翁の足ではとうてい回り切れないので『ガラパゴスゾウガメ』を最後にした。南米ガラパゴス諸島で1930年以前に生まれた(推定100歳以上?)上野動物園の最長老である。甲長130㎝、体重300kg、リクガメ科最大種。居合わせた飼育員から、このゾウガメのニックネームが“タロー”である、と聞かされた。翁の少年時代の“忠犬タロー”とは姿形は異なるが、同じ名前であることに“因縁”を感じ、嬉しかった――3月20日は「上野動物園開園記念日」。1882年(明治15年)日本初の近代動物園。戦時中、飼育している動物を止むを得ず殺さなくてはならなかった悲しい記録があるが、もう2度とそんな時代を招いてはならない。人間と動物、人間と自然の平和な共生の大切さを考える有意義な1日であった・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |