一杯のお味噌汁
昔、子供の頃、2階で寝ていると母がみそ汁のダシに使う削り節を削っている音が聞こえたものだ。カツオ節が残り少なくなってくるとシュッシュッという音からコリコリ固い音に変わって子供心に鰹節が無くなってきたのだな〜と思ったりした。それから間もなく鰹節のパックが出回って削り節の道具は棚の奥にしまわれた 。祖母が亡くなった時に台所を整理していたら、その懐かしい鰹節の削る道具が出てきた。開けてみたらカチカチになったひとかけらの鰹節が出てきた。昔は毎日みそ汁を飲むのは当たり前だった。味噌も昔は味噌の専門店があって白みそや赤みそなどいろいろな種類の味噌が樽に入って並んでいた。そして好きな味噌を好きな分量だけ買えた。いつ頃からだったのか、はっきり覚えていないけれど我が家の和食の朝食も、いつの間にかトーストとコーヒーに変わっていった。米国に来てから私自身も朝はシリアルにミルク、オートミールにフルーツ時々はワッフルやパンケーキなどの洋食スタイルの朝食を食べる事が多くなった。 ところが改めてお味噌汁の一杯がどれだけ栄養があってパワフルなものなのか見直す機会があった。
先週、若くて頭の切れそうな女医さんに会った。クライアントさんの付き添いで言ったのだが、偶然、他のクライアントさんと付き添いで行った時にもその女医さんに会っていた。インド系の超美人でスタイルも良くミニスカートにハイヒールを履いていたので印象に残っている。なかなか評判のいい女医さんらしくネットで調べたら5つ星が付いていて経歴も良かった。その女医さんは、クライアントさんが今現在飲んでいる12種類もの薬をテキパキ確認するとそのうちの3種類の薬を脇に寄せた。“この薬はもう飲まないでね。今、貴方の主治医に話してくるから少し待っていてください”と言った。クライアントさんは腎臓の働きも悪く浮腫みもあり血圧も高かったので塩分を控えて利尿剤も飲んでいた。間もなくして女医さんが部屋に戻るとクライアントさんのデーターを見ながら言った。”塩分が不足しているから塩分をもっと摂取しなさい“と。以外そうな顔でクライアントさんが”スポーツドリンクのようなものですか?“と聞くと
“みそ汁を飲みなさい、これから次に私に会うまでの間、毎日必ずみそ汁を飲むのよ”と。みそ汁の塩分を心配したクライアントさんがその事をドクターに尋ねると味噌はミネラルを含んでいて体にいい塩分だから心配しなくていいと即答した。流石だと思った。
それにみそ汁の具にカリウムを多く含んだジャガイモや野菜、キノコやワカメなどを入れて一緒に食べるとナトリウム(塩分)を体内から排出してくれる作用があるので心配するほど塩分は気にしなくてもいいようだ。味噌のタンパク質は発酵してアミノ酸に変わりコレステロールや高血圧、糖尿病、脂肪肝、ボケ、癌や脳卒中などあらゆる病気にもいいらしい。まさにみそ汁はスーパーフードなのだ。
私が女医さんに“食事を作る時に塩分の制限があれば教えてください。”と言うと“今は必要ないわ”ときっぱり言った。“この後で心臓の方もチェックして問題が無ければ、もっとお薬を減らしたい”とも言った。
どうも現在飲んでいる薬の作用で彼女の体調が悪くなっている可能性があるらしいのだ。それにしてもインド系の女医さんから、みそ汁を飲みなさいと言われた事には驚いたし和食の栄養価についての知識がある事が嬉しかった。
改めて朝のお味噌汁の一杯が、どれだけ大事なエネルギー源になるのか認識させられた。
今私がこちらで良く使うダシは昆布やカツオやシイタケがバランス良く入っているパケージのものを使っている。ケミカルが一切入っていないので天然の優しい味がする。これを使いだしてからインスタントの調味料が使えなくなった。
クライアントさんの中で週1回、訪れる人がいる。行った時に必ず、みそ汁をリクエストされる。朝のその一杯の味噌汁を飲むと生き返るようだと言うのだ。本当に美味しそうにみそ汁を飲む。先週、また新しいクライアントさんの所でその自然のダシを使ってみそ汁を作ったら今まで飲んだみそ汁の中で一番おいしかったと喜んでくれた。そんなに美味しいと言うのならと久しぶりに自分でも、みそ汁を作って飲んでみたら、やっぱり天然のダシで作ったみそ汁は美味しかった。季節によって具をいろいろ変えて飽きないように工夫したら毎朝美味しく健康維持が出来そうだ。また和食を見直して朝のスタートは一杯の味噌汁からにしてみよう、、、
茶子 スパイス研究家 |