最近、著作やテレビで人気を博している脳科学者の中野信子氏が出演しているDVD
をレンタル店から借り、観ました。(「世界は奇跡で出来ている」2016年9月11日放映分)
この中で、中野氏は「人間の脳は100歳を超えても、その一部は死ぬまで成長する」というテーマで最近の学説を解説されていました。これまで私の知る限りでは、人間の脳細胞(脳の神経細胞)は20歳位で約150億個となり、最高値に達し、その後は一日に約10万個ずつ死滅減少してゆくと聞かされていたので、今回の中野先生の新説はシニア年齢の我々にとって明るい情報といえそうです。
私の体験からして、年をとるに従って脳の力が弱くなっているのではないかと気付かされることがしばしばです。体力だけでなく、記憶力、想像力、創造力、やる気など、本来老若とは無関係と信じていたものまでも減退し、これらも脳細胞の減少による結果かと思わざるをえない状況でした。
たとえば、他人の名をうっかり忘れる、以前学校で学んだはずの知識が出てこない、昼食に食べたものが思い出せない、――こんなことにイライラする毎日ですが、中野先生の解説によると、こういった物忘れは、脳の機能低下による結果ではなく、ちゃんと記憶しているのだけれど、年齢を重ねるに伴い記憶すべき容量が増えたため、その膨大な情報ゆえに整理がつかず、記憶の引き出しからすぐ出てこないだけなのだそうです。
現に思い出せないことも何かの拍子に、または誰かからいわれて「アッ、そうだった」と納得するわけで、ちゃんと脳の中に記憶として存在しており、ただ、整理が悪いために思い出すタイミングがずれるだけなのだそうです。
ただし、認知症のような病気の場合は、人の名前どころか、その人と自分の続柄や関係までがわからなくなったり、今日の昼食に何を食べたかではなく、そもそも昼食を食べたかが思い出せなくなってしまうようで、これはお気の毒な場合です。
中野先生の解説によると、記憶すべきことは何かと関連または連想付けて整理して覚えておくことが良いという。たとえば人の名はその人の顔の特徴と名前をこじつけでもよいから何かと結び付けておくのだそうです。
また、連想対象には人生の印象深い出来事など、忘れ難いものと結び付けておくのも一法のようです。
とにかく、私たちは年齢と共に脳の神経細胞の量が減少し、機能が低下して物忘れの量が増大するのではなく、覚えていることを思い出す方法が不十分だったということで、この新しい説に大いに共感するものです。
若い頃は比較的感動が多く、記憶にも残りやすい側面があったのですが、年齢を重ねるにつれ、日々を惰性の中で無感動に生きてゆくので、その場合は“忘れる”前に“覚えていない”というのが真実なのかもしれません。そもそも覚えなければ思い出すことはないわけです。
歳をとっても、常に好奇心をもってものに接し、ハラハラ、ドキドキする生活を送れば、忘れることもなく、脳の活性化に資することになるわけでしょう。これからはそんな毎日を過ごしたいと思うのですが、現実は惰性の日々になっている自分を発見し、これが歳というものかと半分諦めの心境です。
河合 将介( skawai@earthlink.net ) |