懐石料理
昔、禅宗のお坊さんの食事は午前中に1度だけだったらしい。それも一汁三菜、質素で簡単な食事だったとか、、、ダイエットには良さそうだけれど夜には空腹と寒さが募って熟睡する事が難しそうだ。そんなわけで禅僧の人達が、その飢えをしのぐ為に考えたのが体を暖める暖石。火で焼いて暖めた蛇紋岩や軽石を布に包んで懐に入れた事から懐石の歴史が始まったのだそうだ。その後、千利休が茶懐石という独特の価値観を持つ料理を作りだしたのが安土、桃山時代。千利休の茶懐石の主役は、もちろんお茶。その最後に登場するお茶を美味しく頂けるように出される簡単で質素な食事が茶懐石なのだそうだ。そこには四季折々の旬のものを添え季節感を出し暖かいものは暖かく冷たいものは冷たく温度にも器にもこだわる。そして亭主(おもてなしをする方)と客人(もてなしを受ける方)のどちらも決まった作法があるのだそうだ。先月、友人が貴方の勉強の為にも懐石料理を食べに行きましょうと招待してくれた。その事が切っ掛けで改めて懐石料理のルーツを調べてみて、へ〜と感心してしまった。
今まで会席料理と懐石料理の違いなど気にとめなかった。会席料理は宴会料理で結婚披露宴やお酒を楽しむ時に食べるもので懐石料理とは違うものだという事をこの度、知らされた。友人に連れられて入った店のお品書きを見て自分が思っていた会席料理ではなく懐に石と書く方の懐石料理なのだという事に気が付いた。見渡してみると何となくお店の趣や雰囲気が違っていた。順番に運ばれてくる料理はどれも珍しいものだった。料理によっては暖められた石の上に綺麗に盛られているのを見て、これがこの店の特徴なのかしらと単純に思った。懐石料理のルーツを事前に知った上で食べた方が感慨深いものがあったかもしれない。良く考えてみたら十数年前に茶懐石のイベントに初参加したのは、このLAだった事を思い出した。
今回のG7伊勢志摩サミットでは伊勢の新鮮な食材を使った伝統料理の評判が良かったらしい。サミット前から伊勢志摩で首脳陣たちに振る舞われる食事が私も気になっていた。報道陣のお弁当も世界各国から来た報道陣が其々に絶賛していたらしい。次は是非、家族を連れてこの伊勢志摩を訪れたいという海外の報道関係者もいた。やはり伊勢志摩サミットでは日本の伝統文化を伝える絶好のチャンスだったのだろうし経済効果も大いにあるのだろう。それにしても食を追及していくと、人とその人間を取り巻く自然環境や命という領域まで向き合う事になる。懐石料理とは何とも奥深く深淵な哲学の世界でもあるようだ。
茶子 スパイス研究家 |