龍翁余話(398)「秋晴れの日比谷公園にて」
爽やかな秋晴れの10月21日(水)、五反田の友人・Tさんに誘われて『日比谷公園ガーデニングショー』を観に行った。案内チラシによると「第13回の今年のテーマは“未来(あした)へ繋ごう花と緑の輪”、期間10月17日(土)〜25日(日)」とある。趣向を凝らした小さな“庭”(40点)が公園中央の噴水池を取り囲むように展示されている。ガーデニングに疎い翁ではあるが数点ばかり“好みの庭”が目に留まった。羨望の念に駆られながらカメラのシャッターを切る。
写真では単なる平面絵にしか映らないが、その場に立つと“ああ、こんな庭でコーヒーを飲んだらうまかろう”と、つい、誘い込まれそうになる。翁は、素人だから論評を加えることは出来ないが、40点がそれぞれ展示に値する作品ばかりだ、との印象を濃くした。
歴史散策や音楽愛好などの趣味が翁と共通している友人Tさんは、もちろん翁の好み(歴史・懐古趣味)をよく知っている。1時間ほどガーデニングの展示を観て次に案内されたのが公園内の“みどりのインフォメーション・プラザ”で(11月28日まで)開催されている『長岡安平没後90周年記念展』。長岡安平(ながおかやすへい)は1842年(天保13年)肥前大村藩(現在の長崎県大村市)に生まれ、明治・大正にかけて各地の公園の発展に寄与した我が国ランドスケープの先駆者である。ランドスケープとは、その土地の資源・環境・歴史などの要素を総合的に採り入れて構成する社会的シンボル(空間)のこと。日本初の公園デザイナーであり公園行政のパイオニアであった長岡が関わった全国各地の公園の数は40か所にも及んでいる。たとえば日比谷公園・飛鳥山公園・浅草公園・湯島公園・虎の門公園・数寄屋橋公園・向島百花園など(以上は東京)、悠久山公園(長岡市)、岩手公園(盛岡市)、釜淵公園(花巻市)、合浦公園(青森市)、千秋公園(秋田市)、足羽山公園(福井市)、高知公園(高知市)、兼六園(金沢市)、金華山公園(岐阜市)、太田公園(甲府市)など・・・1925年(大正14年)83歳で死去、今年は没後90年。これらの知識は当日の『長岡安平没後90周年記念展』での“にわか学習“によって知り得たもの。
園内で軽食を済ませたあと、噴水池脇の小音楽堂で『タヒチダンス』を観た。予定外のプログラムではあったが(ポリネシアン文化に興味を持つ)翁を充分に楽しませてくれた。このダンスチームは“葛西ネヘネヘ・ティアレ”(タヒチダンサーズ・サークル)だそうで、出番前の数人のダンサーに5分インタビュー、「ネヘネヘの意味は可愛い」「ティアレとはタヒチを代表する(香りのいい)花」「サークルの目的はプロになるためのレッスンではなく軽快なリズムと踊りを楽しみながらシェイプアップやママ同士のグッドコミュニケーションを目的にしている」などを語ってくれた。“プロを目指してはいない”と言いながら、ハワイ・オアフ島北部にある“ポリネシアン・カルチュア・センター”のタヒチダンスに負けないくらいの踊りぶりであった。
次に足を運んだのは、日比谷図書館文化館で(11月23日まで)開催されている『馬琴と月岑』(文化財特別展)。曲亭馬琴(滝沢馬琴)(1767年〜1848年)は江戸時代後期の読本作者で大長編作『南総里見八犬伝』と、【保元の乱】(崇徳上皇と後白河天皇の衝突)で崇徳上皇に属した(弓の名人)源為朝(別名・鎮西八郎為朝)は敗れて伊豆大島へ流され、その後、沖縄に渡り、為朝の子が琉球王家の始祖・舜天(しゅんてん1166年
〜1237年)となる、という物語『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』(挿絵に葛飾北斎の絵が使われている)が有名。一方『江戸名所図会』『武江年表』など、江戸の町についての基本資料を著述したことで知られる考証家・斎藤月岑(さいとうげっしん)=1804年〜1878年)のことは、翁はほとんど知らなかった。それにしても何故『馬琴と月岑』連名の特別展なのか?案内パンフには「二人がともに現在の千代田区に住んだ文化人、彼らが千代田の地に残した江戸文化の実態を明らかにしていきます」とあるが・・・

さて『秋晴れの日比谷公園』の締めくくりは、日比谷公会堂の1階にある『日比谷アーカイブ・カフェ』。レトロ好みの翁にとっては垂涎の憩いの店だ。床も壁もテーブルも椅子もレコードプレーヤー(蓄音機)もすべてが“昭和初期”である。店長の山田さんが翁のリクエストに快く応じて川田義雄(後の晴久)・坊屋三郎・益田喜頓・山茶花究ら“あきれたぼういず”が歌う『地球の上に朝が来る』や、アメリカのジャズトロンボーン奏者トミー・ドーシー(1905年〜1956年)のヒット曲『On
the Sunny Side of the
Street』のレコードを聴かせてくれた。蓄音機の“シャリシャリ音”が、よりレトロ感を盛り上げる。翁にとっては誠に至福のひと時であった。コーヒーも美味かった。たびたび行きたい場所だ。お誘い、ご案内をしてくれた友人のTさんに心からの感謝を・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |