Palm Springs Wind Farm(風力発電所)
クリーン・エネルギーの一つとして風力発電が注目されています。
ここカリフォルニア州は世界的にみても最も風力発電に力をいれている州であり、州全体として現在15,000個以上のタービン(風車)が稼働しています。
総発電量も1990年実績で約25億kwhで、これは全世界の風力発電量の70%以上を生産していることになるのだそうです。
ロサンゼルスから東へ約100マイル、砂漠の中の保養地であるパーム・スプリングス(Palm Springs)近くのフリーウエイ#10沿いには風力発電用の巨大な風車が林立しています。(このようなところを“ウインドファーム〈wind farm〉”と呼びます)
説明資料によると、この地域の11平方マイル余にわたって 3,500もの風車が設置されているとのこと、これらの風車群が山の頂上から中腹そして平地に設置され、その規模は中途半端ではありません。見渡すだけでも壮観です。
太平洋から流れ込んだ風は、Sierra Nevada 山脈に遮られ南北に分けられ、南に流れた風は、砂漠で熱せられて上昇気流となり、1000メートル級の山を越えてパームスプリングスの盆地へと流れこみます。
そして特に、この盆地のサン・ゴルゴニオ・パス(San Gorgonio Pass)と呼ばれる“切り通し”は、強力な風の通り道となるので、この“切り通し”に沿って風車が設置されています。
各風車には発電機(ウインド・タービン)が設置されており、それらはドイツ、デンマーク、日本(三菱、住友)製などの機械です。
これら風車群の施設は現在6つの会社が分割所有しており、作られた電気はすべてS.E.C.(Southern California Edison Company)に買い取られ、消費者へ供給されています。
この wind farm の風車に設置されている発電機(ウインド・タービン)による総発電量は年間9億kwhとのことで、パームスプリングス市の電力の30%がこの風力発電により賄なわれているとのことです。
風力発電の大きな問題点はコストがかかる事ですが、これは最近の急速な技術の進歩でウインド・タービンの改良がなされ、次第にコスト競争力が付いてきました。
しかし、風力発電設備の場合、コスト競争力の他、次のような立地条件を必要とし、普及を困難にしているようです。即ち、
(1)一年中安定的に強い風が吹く広大な土地を確保すること。
(2)発電した電気を需要地にまで送電するのに遠くないこと。
(3)風車から発する騒音が障害とならないように住宅地から離れていること。
(4)航空信号所や電波信号所が近接しないこと。
(5)渡り鳥などの飛行経路にないこと、などです。
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この広大で壮観なウインド・ファーム(風車群)の中をバス(小人数の時はゴルフカート)で案内してもらえるツアーがあります。
風力タービン葉の林の中を90分にわたって説明ガイド付きで廻るツアーは、風力発電の実態を目で見、学ぶ最高の機会を与えてくれます。
ガイド付きツアーに関する情報は下記の通りです。なお、このツアーはすべて車で移動しますが、途中車を降りての説明もあります。砂漠(荒地)強風の中に降り立つので、参加者は、カメラの他、風除けジャケット、サングラス、帽子は必需品ですので持参しましょう。
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ツアー事務所(Windmill Tours, Inc.)住所: 62-950, 20th Avenue, North Palm Springs,
CA 92258
(但し、気象条件などにより変更することがある)
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(1)、FWY #91(東)、FWY #215(南)、FWY #60(東)、FWY #10(東)へ。
(または、いずれかの、FWY を経由して、FWY #10を東へ)
(2)、FWY #60(東)からFWY #10(東)へ合流してから更に約25マイル東進、
North Palm Springs、Indian Ave. 出口でFWY #10を出る。
(3)、FWY #10を出たら左折し、すぐ今来たFWY #10に沿っている 20th Ave.(Frontage Road)を左折(戻る方向)、約1.25マイル進んだところの右側にツアー会社事務所兼ツアー出発所があります。
(4)、ここまでの行程 ;(Torrance方面からの場合)約110マイル、ドライブ約1時間45分。
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【注】(1)風力発電のコスト
風力発電のコストは1980年からの10年間で大きく減少してきており、1980年では1kwhあたり、52セントであったものが、1988年実績で6.4セント(PG&E実績)まで下がっています。
California Energy Commission (CEC)の推計によれば、風力発電のコストは石炭火力、原子力発電のコストに匹敵すると考えられています。
CECの報告によれば、このコスト低減は、風力タービンの改良によるところが大きく、1985年以降のタービンは、それ以前のタービンと比較して46%も効率が向上しているとのことです。
(2)風力発電設備の稼働率その他問題点等
風力発電設備の泣きどころは、その稼働率の低さであり、カリフォルニア州の場合、最高で20%程度です。また、季節によって風速がかなり異なることから、1年を通じて稼働率にかなりのばらつきがあります。
また、風力発電はフル稼働時の騒音及び鳥類への被害が大きな問題となっています。騒音の問題については、設備の改良が行われ、ほぼ満足できるレベルまで、音を小さくできる見通があるが、鳥類への被害については、未だ、解決策が見出されていないのが現状です。
河合将介( skawai@earthlink.net )